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日産・ゴーン氏事件とコーポレートガバナンス 郷原総合コンプライアンス法律事務所 代表弁護士 郷原 信郎

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2018年11月19日、日産自動車の代表取締役会長だったカルロス・ゴーン氏は、2015年3月期までの5年間の有価証券報告書にゴーン会長に対する報酬額を実際の額よりも少なく記載した金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の容疑で、東京地検特捜部に逮捕され、ほぼ同時に、同社の代表取締役のグレッグ・ケリー氏も逮捕された。

西川廣人社長は、二人の逮捕を受け、同日夜に記者会見を行い、「内部通報に基づき数カ月にわたって社内調査を行い、(1)逮捕容疑の役員報酬額の虚偽記載のほか、(2)私的な目的での投資資金の支出、(3)私的な目的で経費の支出が確認されたので、検察に情報を提供し、全面協力した」と述べた。そして、同月22日に開催された日産の臨時取締役会で、ゴーン氏、ケリー氏は、社内調査で明らかになった不正を理由に代表取締役を解職された。

その後、同年12月10日に、ゴーン氏らは金商法違反で起訴されると同時に、直近3年分の同じゴーン氏への役員報酬に関する有価証券報告書の虚偽記載で再逮捕・勾留されたが、勾留延長請求が却下された。その直後に、ゴーン氏が特別背任で逮捕されたことで、ゴーン氏は勾留が続き、特別背任の事実で起訴された後も、2回にわたる保釈請求が却下され、身柄拘束が続いていたが、2019年3月5日、東京地方裁判所は、保釈を許可する決定をし、ゴーン氏は、6日に、2018年11月19日の逮捕以来、108日ぶりに身柄拘束を解かれた。

ゴーン氏・ケリー氏解職までの西川氏らのやり方はガバナンス無視

西川氏は、逮捕直後の記者会見で、「ゴーン氏への権力の集中によってガバナンスが機能していなかった」ことを強調した。しかし、ガバナンスの観点からまず問題とされるべきは、その西川氏らが行ったこと、すなわち、「ゴーン氏の不正」について密かに社内調査を行い、その結果を検察に情報提供して代表取締役のゴーン氏・ケリー氏の2人を検察に逮捕させ、その間に、臨時取締役会を開催して両氏の解職を議決したやり方である。

「権力の集中」というガバナンス問題が、西川氏ら日産経営陣がゴーン氏を追放しようとした「原因・動機」であったとしても、それに対抗するためであれば、ガバナンスを無視したやり方をとっても良いということにはならない。

社内調査の結果、「絶対権力者」の不正が明らかになり、それが悪質・重大であったとしても、不正が「会社の開示義務違反」「会社の資金の私的流用」など会社の対応や財産に関するものなのであれば、本来は、ガバナンスのルールにより、「私的自治」の範囲で解決されるべきだ。社内調査結果を取締役会に報告し、当事者に弁解・説明の機会を与えた上で、代表取締役会長の「解職動議」を出して議決するというのが本来のやり方だ。

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