日本経済新聞社が9月25~28日に金融とIT(情報技術)の融合などをテーマに開催した「フィンサム2018&レグサム」では、国内外のスタートアップ企業が事業内容を競う「ピッチ・ラン」を行った。入賞に選ばれた6社のうち、国内3社の代表に経営戦略や今後の目標を聞く。第1回は駐日英国大使館が授与する「UK賞」に輝いた、次世代仮想通貨ウォレット、Ginco(東京・渋谷)の森川夢佑斗最高経営責任者(CEO)。
◇ ◇ ◇
仮想通貨の秘密鍵をスマホアプリでまとめて管理
――英国に評価されました。
ブロックチェーン(分散台帳)や仮想通貨の領域において、欧州は米州や東南アジアと同様に重要で魅力的なマーケットです。その欧州の金融ハブとも言える英国に評価されたことを、特別なものとして喜んでいます。
――ピッチで特に強調した点は。
FIN/SUMでは毎回さまざまなブロックチェーンのプロジェクトが紹介されますが、一般のユーザーにとってはまだよくわからない点が多いというのが現状です。仮想通貨もそのブロックチェーンの技術の上に成り立っているデジタル資産で、それがまだ十分安全に管理できる状況にないこと、また、ブロックチェーンにも複数あり、それらがシームレスにつながっていないことなどが、わかりにくい要因になっているのだと思います。
仮想通貨はブロックチェーンを利用したさまざまなサービスを利用する際に支払う対価であり、その価値や安全性を高めるためにあるのが仮想通貨ウォレットです。しかしそのウォレット自体もわかりにくいうえ、たとえばビットコインを管理するウォレットはビットコインだけ、イーサリアムを管理するウォレットはイーサリアムだけというふうにバラバラに存在している。それらをまとめて管理できるようにしたのがGincoです。
最近、仮想通貨取引所がハッキングされ資産が流出した例もありましたが、それは事業者のサーバーにある秘密鍵が不正に利用されたためで、Gincoはそうした秘密鍵をスマートフォンのアプリケーションを用いてユーザーの端末の中で管理できるようにしています。
――バラバラだった仮想通貨が一元的に管理できるというのは便利ですが、なぜこれまでなかったのでしょうか。
仮想通貨が増えたのはここ2、3年のことで、こうしたサービスも、ビジネス的な観点ではまだ考えられなかったのだと思います。そうした中で私どもは、比較的早いうちから仮想通貨の一元管理が重要になってくると考え、初めから複数の通貨に対応できるシステムの設計をしていたことが強みになりました。当たり前のことですが、ユーザーの目線に立ったとき、開発者の事情やブロックチェーン同士の競争は二の次で、手に入れた仮想通貨を安心して適切に管理できるかどうかが重要なのです。