横浜市は環境問題や超高齢化への対応などの様々な課題に積極的に取り組んでいる。民間企業の技術やノウハウを大胆に取り入れ、地域経済の活性化にもつなげているのが特色だ。横浜市の活動は国内外から高く評価され、2011年には国から「環境未来都市」に選定された。また、2014年にはOECD(経済協力開発機構)から、「高齢社会における持続可能な都市政策」プロジェクトのケーススタディ都市の1つに選ばれている。横浜市の取り組みの成果と今後の展開について、市の環境未来都市推進担当理事である信時正人氏に聞いた。
横浜らしさを活かした都市づくり
――横浜市は国から「環境未来都市」に選ばれました。どのような政策が評価されたのですか。
「環境未来都市」に選定されたのは全国から11都市で、被災地以外から5都市、被災地から6都市が選ばれました。「環境未来都市」は環境問題や超高齢化への対応策が主な選定基準となっていますが、この2つ(「低炭素・省エネルギー」と「超高齢化対応」)は音楽コンクールでいえば課題曲。我々は自由曲となる独自の施策として更に3本の柱を立てました。
1つ目は水と自然環境。美しい川や海といった自然に加えて、大気や土、緑という人間生活のベースにもう一度目を向けようということです。自然のインフラですね。更に上下水道の技術の向上とその技術の国内外への展開も図ります。土木技術の向上で、本来、人が住めなかったような場所も住宅地に変わってきたこともあり、防災の面からも自然のインフラから見つめ直すという狙いもあります。
2つ目はクリエイティビティ。横浜は昔から芸術や文化の発信に力を入れてきました。また、みなとみらい21地区にある「パシフィコ横浜」をはじめとしたコンベンション施設も充実しており、国際会議の参加者総数では日本一を誇ります。
3つ目はチャレンジ。企業と連携しながら、環境・エネルギー分野をはじめとした21世紀型産業を、ここ横浜から生み出そうと様々な挑戦をしています。
民間企業との連携に高い評価
――具体的にはどんなプロジェクトが評価の対象となったのでしょう。
国から高く評価されたのは、民間企業などと連携したまちづくりです。この点は、OECDから「高齢社会における持続可能な都市政策」プロジェクトのケーススタディ都市に選定された際にも評価対象として真っ先に挙がっています。自治体がここまで民間としっかり組んで取り組むことは今までにほとんどなかった、と。具体例を1つ挙げると、2012年から東京急行電鉄と連携して進めている、東急田園都市線たまプラーザ駅北側地区での「次世代郊外まちづくり」があります。
たまプラーザは高級住宅街として知られますが、高齢化への対応が課題になっています。丘の上には戸建て住宅が並ぶ一方で、駅前に商店や病院などが集中し、このままでは車が運転できないお年寄りにとって不便な街になりかねません。今までのようなやり方での都市計画、街づくりで良いのかが問われています。
最近は職住接近がトレンドになっています。若い人たちにとって、都心まで1~2時間もかけて通勤する生活スタイルは魅力的ではなくなりつつあります。どうすれば、高齢者も若者も住みやすい街になるのか。マンションのリノベーションなどを中心に、新たな街づくりを議論してきました。意識の高い住民の方が多く、市民の発案による地域活性化のプロジェクトも15くらい立ち上がっています。
たまプラーザ以外にも、磯子区の洋光台駅周辺地区ではUR都市機構と、旭区・泉区の相鉄いずみ野線沿線では相鉄ホールディングスと、緑区の十日市場町周辺では東京急行電鉄・東急不動産・NTT都市開発などと、それぞれ手を組んで、各地域の特性を生かした課題解決の取り組みを進めています。