「シマノ」といえば何を連想するだろうか。自転車好きであれば、変速ギアのシステムなどを中心とする自転車部品だろうし、釣り好きであればリールなどの釣り具だろう。ハイエンドの自転車に搭載する変速ギアは市場で特に強い。世界的な半導体メーカーの米インテルをご存じの方は、シマノが「自転車業界のインテル」と呼ばれると聞けばイメージがわくと思う。今回は、シマノの自転車部品事業を分析するとともに、日本の輸送機器メーカーが突きつけられている課題にも触れたい。
自転車部品事業が売上高の約8割を占める
初めにシマノの収益構造について見てみよう。同社の決算書ですぐわかるように、ほとんどの売上高と利益は自転車部品事業が稼いでいる。自転車部品事業は売上高の約8割、セグメント利益においては約9割を占める。また、自転車部品事業のセグメント利益率は20%超とかなり高い。もちろん、釣り具事業も営業利益率では10%を超え、製造業としてみれば比較的高収益であるが、自転車部品事業はそのさらに上を行く。
シマノがとりわけ強いのが「ロードバイク」と言われる舗装路を高速走行する自転車用の部品で、シマノとイタリアのカンパーニョロ、それに米SRAM(スラム)の3社で同市場のほとんどを占める。カンパーニョロは変速ギアの他にホイールなども扱う高級自転車部品メーカーで、SRAMは未舗装路などでも走行できるマウンテンバイク(MTB)用自転車部品メーカーとしてもともと名をあげ、その後、ロードバイク用部品に参入した企業だ。
しかし、シマノの自転車部品事業は現在、二つの大きな波にさらされている。「テクノロジーの進歩に伴う事業領域の拡大」と「ユーザーの自転車利用動向の変化」である。