日本的デジタル化の落とし穴

AIの進化が求める人との新たな役割分担とは? 第5回 音楽家・大山平一郎、Takram・櫻井稔、アクセンチュア・保科学世、畦地直樹の4氏による座談会

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畦地AIに任せていい部分、AIに任せられない部分、AIに任せられても任せてはいけない部分の3つがあると思います。問いに対してシンプルに答えを出すビジネスは、効率的にこなすためAIに任せてよいでしょう。一方、新ビジネスのアイデアを考えることをAIに任せるのは究極的に難しいと思います。そして、それらの中間にあるような、AIでできるかもしれないが人がやったほうがよい領域があります。ここは企業や国ごとに対応が異なるところでしょう。

例えば、中国には個人の信用度をモバイル決済の実績をもとにスコアリングする会社がありますが、日本だと実現が難しそうなことまで行っています。例えば、信用度が高い人はビザが取得しやすい、婚活サイトで有利になる。その一方、信用度が低い人は不便さに甘んじなければなりません。企業はどこにAIを活用していくのか、あるいはどこでAIを活用しないのか、あるいはどこはAIに任せることができても人のサポートに使っていくのか――といった棲み分けについては真剣に検討しないといけないと思います。

保科 効率化・最適化を進めるという観点では企業がAIをまったく使わないという選択肢は今やありえません。ご指摘のように使い分けていくことになるでしょう。ただし、中間にあるような、AIでできるかもしれないが人がやったほうがよいものの部分の判断は結構難しいところがあります。

櫻井 4月に上海に行ってきましたが、多くのお店で現金がほとんど使われなくなり、代わりに携帯電話を使ったモバイル決済が行われていました。さらに、様々なサービスが社会インフラ上で連携しているため、普段の素行が悪い人や信用度が低い人が、実際に空港で出国禁止になるような事件も起きています。また市内では、車がクラクションを鳴らすと、監視カメラで車が特定されてペナルティーが与えられる仕組みがあるため、以前は騒がしかった街がとても静かになったそうです。

それぞれで使っている技術はAIのような最先端のものとは限らないのですが、国や地域が社会インフラに対して、積極的に技術を取り入れようとしていることに目を見張ります。アメリカでは技術を取り入れた「新しいライフスタイル」といった意識で人々がテクノロジーと向き合いますが、中国は「こちらのほうがお得だよね」と肩の力を抜いてAIをはじめとした最新技術を活用しているように見えます。

大山 中国のようなあれだけの大きな国・人口をマネジメントするにはそうした技術が必要なのでしょう。一方、中国の価値観とわれわれ日本の価値観は違うので、それがどう折り合えるのかという問題はあります。

櫻井 AIによって変わる人々の価値観については大学の講義でもよく扱うのですが、AIは「文明」と「文化」それぞれで価値を生み出していくものだと考えています。例えばAIは自動運転を実現し、移動の利便性が高まるといった文明的な価値を生み出します。一方、運転が必要なくなった車中での人々の営みは、時間をかけながらも文化的な価値を生み出すはずです。私はこのように文明の発展の裏側のようなところに文化が生まれると考えています。過去を振り返れば、自動車の発明という文明の裏で、人は高速に移動するためだけに走るのではなく、ランニングという文化を生み出しました。

中国と日本の価値観は違いますが、文明も国の文化の上に醸成されます。現にヨーロッパでは個人情報に対する意識が高く、今の文明の急速な発展を部分的に制限しようとする動きがあります。文明と文化のどちらが先に存在するのかというと、にわとりと卵のようなものでしょう。日本が今、文明が急速に発展する高度経済成長期を迎えていたら、今の日本とは違う文化が生まれているはずです。

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