日本的デジタル化の落とし穴

AIの進化が求める人との新たな役割分担とは? 第5回 音楽家・大山平一郎、Takram・櫻井稔、アクセンチュア・保科学世、畦地直樹の4氏による座談会

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企業がAIに期待することは友人やエキスパートの役割

保科 まず現実のビジネスの状況から話を始めましょう。畦地さんにうかがいますが、企業は急速に発展するAIにどのような期待をしていますか?

畦地 消費者的な目線で説明します。最近、インターネット検索では欲しい情報をすぐに得にくくなっており、かえって詳しい友人に聞くほうが早いことが珍しくありません。私も仕事上の課題を、社内のエキスパートに聞いて解決する場合が増えています。企業がAIに期待することはこの友人やエキスパートに相当する役割です。例えば、AIを活用して、社内にエキスパートなどがいなくても友人に聞くような感覚で必要な情報を得られるようにしたいと考えています。

保科今の話には2つのポイントがあります。

1つは「友人に聞く」という部分です。ネット検索の機能は、データがより蓄積され、アルゴリズムやシステムが発展すれば改善していくでしょう。一方、「友人に聞く」にはアルゴリズムやシステムの発展では解決できない要素があります。「あのお店はいいんだよ」「そうなんだ」といった、人と人のコミュニケーションがもたらす共感のようなところで、たとえ同じ情報であってもAIが提供する場合と人が提供する場合で価値も違ってくるでしょう。

もう1つは、AIには確かに人には対応不可能なほどの膨大なデータを処理できる――それは人にはない価値であるものの、伝えるべき情報そのものも膨大であった場合に、処理結果を人が受け止めきれないことで、膨大な情報を膨大であるがゆえに人にどう見せるのかが重要になります。まさに櫻井さんはビッグデータをどう見せるのかという可視化を専門とされています。見せ方の工夫も重要ですし、ご専門ではないのかもしれませんが、AIの判断をそのまま使う場合と、AIの処理結果を人に判断させる場合で意味合いが違うと思います。デザインの際にどのようなことを考えられていますか?

櫻井 ビッグデータの可視化は、処理結果を人にどう見やすくするかといった方法論の話になりがちなのですが、実は「人の認知限界を超えた膨大なデータ」をまずは把握できるようにすることがとても重要です。例えば、ここで私が早口でしゃべるだけで、人の認知限界は簡単に超えることができてしまいます。ビッグデータの可視化では、大量のデータを簡素化するのではなく、そのまま俯瞰(ふかん)できるようにすることで、全体感や大局観を失わないまま人に伝わるようにします。

保科 その点は自分も腹落ちします。需要予測のシステムで人の判断を経ずに自動発注する場合、AIの予測アルゴリズムはいくら高度にしてもよいのですが、AIの予測結果を踏まえて人が発注する場合は、アルゴリズムの高度化とともに、なぜAIがそう判断したのかを人にわかりやすく伝えることも同時に重要になります。人とのインタクラクションがある以上、人が理解して行動に反映するところまでをAIがカバーすべきであることを忘れてはいけません。畦地さん、この点に関連して企業にAIを導入する際に感じる限界、ハードルにはどのようなものがありますか?

畦地2つほどあります。

1つは、ある程度は中長期的な投資になると意識しなければならないことです。お客様にはAIを導入すれば何でも実現できると考えている方が一定数まだいらっしゃいますが、学習というAI特有の事前処理を行うためには、まずデータを集めるところから始める必要があります。例えば、企業が消費者との新しい接点を作るためにAIを導入したいとき、消費者を理解できるようにするデータを集めるのは容易ではありません。人とAIのインタラクションを設計するとなれば、さらに労力や投資が必要になります。

もう1つは、そうやってAIと人のインタラクションまでを作り込んだ仕組みを作っても、AIは消費者のデータを文脈や背景まで理解して答えを出してくれるわけではないことです。端的にいうと統計的に処理した結果を返しているため、AIが活用できる領域かどうかは慎重に見極める必要があります。つまり、AIありきで導入を検討するのではなく、ビジネス上の目的が検討された上で、必要な手段としてAIをどのように活用するのかを考えるべきです。

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