AG/SUM キーパーソンに聞く

農業フランチャイズで日本のトップ目指す seak 栗田紘氏

アグリテック

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日本経済新聞社がアグリテック(農業とテクノロジーの融合)をテーマに開催したイベント「AG/SUM(アグサム)アグリテック・サミット」(6月11~13日)に関連し、参加企業・団体のキーパーソンに注目テーマや最新動向などを聞いた。未経験者が農業ビジネスを始めることができるプラットフォーム「LEAP」(リープ)を展開するスタートアップであるseak(東京・港)の栗田紘氏は、「農業を変えたい」と考える人たちが増えつつある環境を背景に、将来は農業フランチャイズの手法で日本のトップを目指すと語る。

新規就農者のワンストップの仕組みつくる

――2016年にスタートした「LEAP」の仕組みを教えてください。

LEAPはこれからの農業を形成する新しい「農業フランチャイズモデル」です。農地の開拓、施設の構築、栽培技術の提供、販路の確保、資金のあっせんという、農業を始めるために必要な5つのステップを、新しく農業を始める人に垂直統合でパッケージにして提供します。まず、農業を始めようという人は、就農する自治体で約2年間の農業研修を受けなければなりません。しかし、LEAPが取得済みの認定を武器に優先的に農地を利用権で確保し、すぐに農地を活用できます。

栽培技術では、「袋栽培」と「肥培管理」という2つの独自技術を科学的な観点に基づいて確立しています。独自に作った土を袋に入れ、そこに苗を植えるという「袋栽培」により、栽培時の変動要因をゼロにして、LEAPメンバー間では全て均一な環境で栽培を開始することができます。その培土袋にどれくらいの水と肥料を与えるかの「肥培管理」も、独自のレシピで構築しています。レシピを正確に再現することで、レベルの高い栽培を実現することが可能です。

LEAPを通じて生産された野菜は「ゆる野菜」という独自ブランドで販売します。高級スーパーを中心とした販売先を確保しており、朝に畑で採れた野菜を昼までには店舗に直送して並べる「朝どれ野菜」の出荷体制を確立しており、鮮度と地場野菜という付加価値を付けられます。

農業を始める際は、特に野菜の場合にはビニールハウス設置、苗や土の購入などで最大1000万円の初期費用が必要ですが、若者が自己資金で用意するというのは非常に厳しいでしょう。そこで、金融機関と連携して、自己資金が不要で低利率のLEAP独自融資を中心としたファイナンスメニューをあっせんし、活用できるように準備を進めています。

さらに、仮に弊社のバランスシートの中で資金を調達していけるのであれば、「社内フランチャイズ」という形で、社員の待遇と最低限の給与を確保しながら、創出する収益の大部分を出来高報酬で得られる仕組みでも広げていきたいと思っています。これによって、農業における収益リスクに躊躇(ちゅうちょ)をしていた、農業の深い素養を持つ魅力的な人材も確保していきたいと考えています。

これらの農地・施設・栽培・販売・資金を一括して垂直統合で新しく農業を始める人に提供し、資金を除く全てのステップの取り扱いに際して一律15%の手数料を設定しています。フランチャイズモデルを実現するため、LEAPでは ウエブ・アプリ・センサー・生産管理という4つのプラットフォームを独自に構築しています。これらを通じて、農業経営におけるあらゆるデータをリアルタイムで集約することができます。

――コンビニエンスストアのようなフランチャイズビジネスを農業分野で展開するのはとても面白い取り組みです。現在の進展状況はどうですか。

現在、LEAPは神奈川県藤沢市と長野県軽井沢町に農場を持っています。新規就農しているのは12人ほどですが、来年にはフランチャイズモデルを本格展開するよう準備しています。トマトやキュウリ、ズッキーニなど栽培モデルごとの収益性などのシステムやマネジメントの実証を進めており、オープンにできるようにすることが目標です。あと1~2年でできると思います。

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