商品知識があるのに、会話が上手なのに、価格設定のポイントをおさえているのに――なぜか売れない。部下にこんな営業員はいませんか。有能な同僚のノウハウを覚えても、期待ほど伸びない時には、根本的なスタンスに立ち返って解決しましょう。営業コンサルタントの和田裕美さんが、成約のカギを握る「フロントトーク」を中心に指南します。
■あなたの商品知識はズレている?
あなたは今の結果で満足していますか?本当にもっと結果を出したいのなら、まずは人の気持ちがわかるようになることです。自分のことをよくわかってくれない人に悩みを打ち明けたりできませんよね。だからこそ、人の気持ちがわからない人に、モノを売ることなどできないのです。そして、実は人の気持ちを理解するためには、幅の広い商品知識が必要になってくるのです。
しかし、商品知識というと、「ああ、自社商品のことをよく知っていることですよね」「会社の研修で結構やっています」と、思う方がいるかもしれません。もちろん、商品知識といえば、形状、機能、サービス内容などになるでしょう。しかし、実は、それだけでは語れません。商品知識はとても奥が深いのです。
商品について語れるすべてが「商品知識」です。たとえば、あなた自身が商品だった場合、どんなことを指して「商品知識」というでしょうか?
就職のとき、自分を売るために必要になるのが「履歴書」というあなたのパンフレットですが、それに書かれた情報、さらにその情報以外のものはなんでしょうか?
【あなたのスペックは?】
・名前、生年月日
・生まれたときから今までの人生
・親、親戚、その他の人間関係
・性別、身長、体重
・性格、趣味
・身体の構成成分(水、たんぱく質、脂肪……)などなど
「あなたは何?」を挙げていくと、こんなふうにたくさん出てくるわけです。やっぱり履歴書1枚ではおさまりませんよね。こんな風にいろいろな角度から「あなた」を語ることができます。つまり、相手があなたに興味を持つきっかけは、人によってそれぞれ違う情報になることもあるのです。
そして、商品知識はやみくもに、「これいいですよ。ここがいいですよ」と同じ説明を誰彼問わずにするものではないのです。お客様は十人十色。当然、それぞれのお客様が欲しい情報も違います。だから、「相手の知りたい情報」かどうかを探って伝えていく必要があります。その知識が、目の前のお客様にとって必要な情報であるかどうかがポイントです。
たとえば、就職試験の面接官が宇宙人だったら、「私は○○大学出身で、△△が得意で……」と伝えるよりも、「私は地球に住む人間です。主に水分、たんぱく質、脂肪、ミネラル、糖質でできています」という情報を与えたほうがいいかもしれないということです。
宇宙人まで飛躍しすぎましたか?(苦笑)。
ではもっと現実的に、商品を「健康ドリンク」としましょう。この場合、その成分、製造過程、パッケージ、効果効能、味などが商品知識ですが、マーケティング的な要素(観点)として、「どんな人向けか」「どんな悩みを解決するのか」「どんなときに飲めばいいのか」があります。
また、「類似品は何か?」「競合商品は何か?」「競合と比較されても、負けない個性は何か?」などの他社比較も商品知識の一部です。さらに、飲んだ人の感想などもあります。お会いしたお客様によって、「健康ドリンクよりもお酒がいい」という人、「健康ドリンクよりもサプリがいい」という人、
「健康ドリンクよりもお菓子がいい」という人、「そもそも薬も健康ドリンクもいらない」という人など、それぞれ比較するもの、趣味嗜好も違っています。
どんなお客様にも対応できるように、あらゆる想定をして準備し、「なぜ、健康ドリンクが他よりもいいのか?」という情報を提供できるか。そうしたことも立派な商品知識なのです。相手(お客様)が興味のある情報や知りたい内容は、それぞれだからこそ、相手が何を知りたいのか、相手を知ることが商品知識ということです。