グローバル競争時代のものづくり ~日本企業復権への10カ条

品質にも"松竹梅"がある~Q(品質)・C(コスト)・D(納期)の考え方を見直そう 東京大学大学院経済学研究科  ものづくり経営研究センター特任研究員 吉川良三 氏

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✕ 品質は高いほど、機能は多いほどいい
         
◯ 過剰な品質・機能で価格が高くなるのは消費者にとって迷惑

日本の技術者は、「品質は高いほど、機能は多いほど優れている」という価値観からなかなか抜け出せないようだ。常に最高の品質を追求し、品質を落とすことに対しては、進んできた道をわざわざ後戻りするかのような心理的抵抗を感じるらしい。しかし、そもそも品質や機能は、コストと表裏一体の関係にある。顧客にしてみれば、過剰な品質や必要ない機能によって自分が支払う対価が高くなるのは、迷惑以外の何ものでもない。

量販店がお客様? 企業間競争に没入する日本メーカー

日本の製品がいかに高い技術でつくられ、豊富な機能を備えているかは、テレビショッピングを見ていると良く分かる。例えばあるデジカメを紹介するときは、手振れ補正機能を強調するために大きく揺らしながら写真を撮ったり、ろうそくの明かりでも写真が撮れる機能を紹介するために、スタジオを真っ暗にして撮影したりする。

だが、それらが日常生活で本当に活用されるかは、大いに疑問だ。実際にデジカメで撮影するときに、手を大きく揺らしたり、ろうそくの明かりしかない場所で撮影したりすることはほとんどないからだ。デジカメの画素数の多さやモード機能の多くも、実際に重宝し使いこなしている人はどれだけいるだろうか。

画素数が増えると最初は値段が上がるが、そのうち他社も追いついて差がなくなる。すると今度は手振れ補正機能が出てきて、少し価格が持ち直すが、やはり他社製品も搭載するようになる。そうこうしているうちに打つ手がなくなり、値段もどんどん下がって、テレビショッピングや通販でパソコンのおまけになっていたりする。

日本のメーカーはもう数十年も、消費者の要求水準を超えたところでこうした競争を延々繰り広げてきた。その背景には、1つの産業に多数の企業が並存する特殊な状況の中で、消費者より同業他社に目が行きがちだったという事情がある。しかも、日本のメーカーは消費者ではなく、家電量販店をお客様と思い込んでいるふしがある。全てのメーカーの商品を扱う量販店では、「A社のデジカメは800万画素だけれど、B社は1000万画素」「C社のデジカメだけ手ぶれ補正機能が付いている」といった差異は、似たような商品が並ぶ中で手っ取り早いセールストークの材料になりやすい。いかにライバルに差をつけられるか、どんな機能を付けたら量販店に買ってもらえるかばかりを考え、量販店から先の消費者が見えなくなってしまったかのようだ。

メーカー側は売れれば終わりと考えているかもしれないが、消費者は買って終わりではない。消費者は、使って初めて良し悪しを判断する。操作する機会もない機能というのは消費者にとっては結局、買ってはみたものの冷蔵庫の中で食べないまま腐らせてしまう食品と同じなのではないだろうか。

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