「地味」「細かい」「誰がやっても同じ」「外注してもいいんじゃない」......「経理」のイメージを知り合いに聞いたところ、痛快なまでの答えが返ってきました。ところが経営コンサルタントとして数多くの経理現場を拝見するようになって、あることに気づきました。それは、経理として同じような仕事をしてきたはずなのに、経営がうまくいっている会社とそうでない会社があるということです。
これは一体どういうことだろう。ひょっとすると、経理社員の仕事の仕方にも、会社を良い方向に導く経理と、そうでない経理があるのかもしれない。本連載では、それを解明していきたい。
黒字会社と赤字会社の経理社員の習慣の違い
よく黒字会社と赤字会社では何が違うのか、という話を耳にしますが、ここでは、事業の収益構造や市場規模の大小といった外的要因ではなく、社員に注目したいと思います。黒字会社の社員と赤字会社の社員では、どのような違いがあるのでしょうか。学歴でしょうか。勤務態度でしょうか。仕事のスピードでしょうか。私が見る限り、社員一人ひとりの潜在能力は、どちらもほとんど変わりありません。
では何が違うか。それは「習慣」です。
会社全体が醸し出す「習慣」
つまり、社員一人ひとりのパーソナリティが有する「個性」よりも、その会社全体が醸し出す「習慣」による影響が大きいのです。
これは解決が簡単なようで、実は深刻な問題です。つまり、会社全体が醸し出す「習慣」が赤字の理由であるとしたら、アルバイトから社長に至るまで、その会社の社員は誰もそのことに気づいていないし、気づいていない以上、直せないからです。赤字からの脱却や企業再生には、外部の力を借りたほうがよいというのは、社内の人間ではお互いに観察しても気づかない「会社全体の赤字体質の習慣」を指摘してもらうためだと私は思います。