社員の不祥事・トラブルの予防と対策

退職前にこっそり顧客名簿をコピー、その結果は? 本間邦弘氏

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実家の酒屋を継ぐと社員が退職、実はライバル会社に就職していた

A社は、従業員数50名の食品製造会社です。A社に営業職として10年間勤務した係長のBさんが「家業の酒屋を継ぐために退職したい」と退職願を提出しました。A社の社長はBさんと面談し、退職にあたり「退職確認書」の提出を求めました。Bさんは「私は家業を継ぐだけなのに用心深いですね」と言いながら2日後に提出しました。翌月、Bさんは自己都合で退職し、4週間後に退職金を受け取りました。

しかし、Bさんが退職した翌月にBさんの部下であった主任が突然に退職を申し出、その翌月にはさらにその部下も退職しました。A社では、立て続けに同じ部署の社員が退職することに疑問を持ち、退職後のBさんの行動などを仲の良かった社員や取引先などに確認しました。すると、BさんがA社のライバル会社に就職していたことや、後から退職した2人を引き抜いていたことが判明しました。

A社の社長は、Bさんがウソの退職理由だけでなく、ライバル会社への就職など度重なる裏切り行為に怒り心頭でした。しかし、A社では実際に損害などが発生していないことなどから、最終的にBさんに警告などを記載した文書を送り、さらにBさんに詫び状を提出させたところA社の業務に悪影響が生じることはありませんでした。

発生の要因

A社の業界では、ライバル同士が生き残りをかけてしのぎを削っており、「取った、取られた」が常識でした。Bさんが同業他社から「うちに来ないか」と声をかけられ、良い条件を提示されて転職することは、A社として細心の注意をはらっても防ぐことはなかなか難しいといえます。しかし、A社でも確認書の締結をしましたが、事実確認を行ったうえで、詳しい退職の理由や企業秘密を守ることなどをじっくりと話し合うことも必要だったと考えられます。

A社の対応<事実確認>

Bさんはすでに退職しており、A社の呼び出しにも応じないため、本人への事実確認はできませんでした。しかし、Bさん自身のブログに営業の記載があり、またA社の取引先の前でBさんがA社の社員と出くわしたとたんに慌てて帰り、取引先から聞くとBさんは名刺を出しはしなかったものの、ライバル会社への就職とその会社の営業に来たとの話から、背信行為は動かぬものとなりました。

A社の対応<警告など>

A社は、Bさんに、虚偽の理由で退職し背信行為をしたことへの抗議と、今後はA社に損害を与える行為を一切しないよう警告の書面を送り、さらにBさんから詫び状の提出を求めました。BさんはA社を退職する際に退職確認書を提出しており、それが公になることを恐れたのか、A社が作成した詫び状を郵送してきました。

A社の対応<根拠>

Bさんが背信行為をしたことは事実ですが、A社の営業努力や長年培ってきた取引先との信頼関係により、損害は発生していませんでした。また2名の社員がBさんに引き抜かれたことを証明することも困難なため、Bさんへの書面による抗議と詫び状の提出としました。

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