競争しない競争戦略

手術針トップ・マニーの「やらない」経営 山田英夫氏

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ニッチ企業は、参入障壁を高める質的コントロールと、市場規模の量的コントロールの2つが武器となる。

ニッチ戦略のマトリックス

前者の質的面に関しては、リーダー企業は相対的経営資源では下位企業より優位にあるが、リーダー企業といえども、すべての資源で優位であるとは限らない。ニッチを追求する企業は、リーダーがカバーできていない資源の優位性をテコに、その分野に絞って事業を行うことができる。これを「質的限定」と呼ぼう。

例えば、ガン保険の分野では、生命保険のリーダーの日本生命であっても、1974年からガン保険を販売してきたアフラック(アメリカンファミリー生命保険)の契約数、経験の蓄積にはかなわない(規制緩和により日本生命がガン保険を販売できるようになったのは2001年である)。

<FONTBOLD />図表1 ニッチ戦略を考える軸</FONTBOLD>

図表1 ニッチ戦略を考える軸

後者の量的な面に関しては、リーダー企業は一般に下位企業に比べて固定費が高く、あまり小さな市場に参入すると、その固定費の高さから利益が出ない。そこでニッチを追求する企業は、リーダーにとっては小さすぎる市場、コストがかかりすぎる市場を開拓し、その分野に集中して事業を行うことができる。これを「量的限定」と呼ぼう。

このような質的限定と量的限定の2つの軸を組み合わせると、図表1のようなニッチ戦略を考えるマトリックスを描くことができる。

量と質は市場を前提とした軸であるが、質に関してはニッチの場合、企業の資源・戦略と市場とは1対1の関係になるので、企業の資源から市場の質の特徴を説明していくこともできる。なお、図表1の中で(3)は、量的にも質的にも限定が低いため、リーダー企業に同質化されてしまう可能性が高く、ニッチ戦略としては持続性がないため除外する。

コトラーは、ニッチ企業の専門化の方法として、図表2のようなものを挙げている。しかし、彼は箇条書き的にニッチ企業の種類を提示しただけであり、網羅性に欠ける。また、垂直レベル専門化のように、市場の規模や質とは関係のないものも含まれている。そこで、質と量のマトリックスを使って、もう少し体系的にニッチ戦略を考えてみよう。

<FONTBOLD />図表2 ニッチ企業の専門化の方法</p><p>注:例は筆者作成</p><p>出所:コトラー著、村田昭治監修、小坂 恕・疋田 聰・三村優美子訳(1996)『マーケティング・マネジメント 第7版』プレジデント社</FONTBOLD>

図表2 ニッチ企業の専門化の方法

注:例は筆者作成

出所:コトラー著、村田昭治監修、小坂 恕・疋田 聰・三村優美子訳(1996)『マーケティング・マネジメント 第7版』プレジデント社

10のニッチ戦略

図表1の各象限を簡単に説明すると、(1)は質的にも量的にもリーダーに同質化されない武器を持っている。例えば、高級品のオーダーメイド限定生産などがこれにあたり、この戦略を「カスタマイズ・ニッチ」と呼ぼう。また、市場規模は大きくないが、ニッチ企業の製品・サービスを代替するための切替コストが高く、リーダーの同質化が難しいケースがある。このケースを「切替コスト・ニッチ」と呼ぼう。

次に(2)は、質的にリーダーに同質化されない高い技術や特殊な経営資源を武器に持つ戦略である。例えば、リーダーが保有しない技術でリーダーを寄せつけない「技術ニッチ」、リーダーがカバーできていない流通チャネルを押さえて同質化されにくくした「チャネル・ニッチ」、さらに極めて特殊なニーズに応える「特殊ニーズ・ニッチ」などの戦略が考えられる。

そして最後の(4)は、量を限定することにより、リーダーが同質化してもペイしない状況を作り出す戦略である。例えば、空間的・時間的に限られた市場には、固定費が高く、高稼働率が求められるリーダー企業は同質化をしかけにくい。この戦略を「空間ニッチ」「時間ニッチ」と呼ぼう。

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