「業務や意思決定にデータを活用する」というのは常識。だが、口で言うほど簡単ではない。データを活用できる人材を育て、企業文化の一部となるまで根付かせるには、経営トップのマネジメントが欠かせない。その指針をカブドットコム証券 代表執行役社長であり、日本データマネジメント・コンソーシアム(JDMC)の理事を務める齋藤正勝氏に聞いた。
齋藤氏の持論は、ビッグデータはあらゆる現場の予測のために活用すべきであり、ビッグデータを特別な人、特別な組織のものにするべきではない、ということ。それが「データ活用人材の育成」と「経営に貢献するデータ活用」につながる。(日経BizGate)
――世の中を見渡してみると、「ビッグデータ」に対する理解と活用がいま一つ進んでいないようです。それはなぜだと思いますか。
齋藤正勝氏
カブドットコム証券 取締役 代表執行役社長
大学卒業後、野村システムサービスに入社。第一證券を経て伊藤忠商事に入社し、オンライン証券事業の立ち上げメンバーに。日本オンライン証券の設立に伴い、同社の情報システム部長に就任。2001年、イー・ウイング証券と合併しカブドットコム証券と改称。04年より代表執行役社長を務め、05年から取締役を兼務し現職。日本データマネジメント・コンソーシアム理事。
実は、多くの企業でビッグデータをうまく活用できない理由が2つあります。
1つは技術的な理由で、「ビジネスに必要なデータが、きれいになっていない」ことです。私たちのような新興企業は例外ですが、古くからある金融系の企業は、長年にわたって機能拡張を続けてきた複雑なシステムを運用しています。しかも、困ったことにそれらの中身の多くがブラックボックス化しています。すぐには信じられないかもしれませんが、情報システム担当者ですら「よくわからない」「システム全体を把握している人がいない」という企業は多いのです。
同様に、データも複雑になっています。ビッグデータとして使いやすい「きれいなデータ」を抽出するにはどうすべきなのか、よくわからない状態になっています。
人は、よくわからないものを怖がります。そして怖いものは否定します。だから「うちもビッグデータを活用しよう」と社長が言い出しても、システムの実情を知るシステム担当役員は冷たい返事をします。頭が良いので、「できない理由」を探すのも天才的にうまい。そういう企業で、うまく活用できるはずがないでしょう。