日本農業は世界に勝てる

農業にも「企業的経営」、高まる収益力 キヤノングローバル戦略研究所 山下一仁氏

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日本列島は南北に長いため、作物の生育期に、ずれがある。この特性を活かし、農産物・食品大手の米ドールは、国内7カ所の農業生産法人に資本参加し、一定の作業が終わるごとに機械と従業員を南から北の農場へ移動させ、生産効率を高めている。こうした企業的経営は農業の新たな展開方向を示すものであり、農業への企業参入についてのヒントを与えてくれる。

「農業は工業とは違う」という主張がなされる。これに続けて、農政共同体は「だから保護が必要だ」と言う。

しかし、農業生産への投入物は、化学肥料、農薬、農業機械など工業の生産物が多い。最近では、GPS、センサー、ロボット、コンピューターなど最先端の工業技術が農業の現場でも使われている。同じ工業といっても、セメント業と自動車業との相違は、農業と工業の相違以上に大きいかもしれない。

自然や生物を相手にする農業では、季節によって農作業の多いときと少ないとき(農繁期と農閑期)の差が大きいため、労働力の通年平準化が困難だという問題がある。これは、農業が工業と違う大きな特徴である。農業は、一定の原料と労働を投入すれば、毎日同じ量の製品を生産できる工業とは異なる。米作でいえば、1週間しか猶予のない田植えと稲刈りの時期に労働は集中する。農繁期に合わせて雇用すれば、他の時期には労働力を遊ばせてしまい、コスト負担が大きくなる。

活用できる日本の自然条件

しかし、日本には、これを克服させる自然条件が備わっている。標高差と南北の長さである。

傾斜があり、区画が小さく農地が多い中山間地域では、農業の競争力がないと考えられている。しかし、中山間地域では標高差があるので、田植えと稲刈りにそれぞれ2~3カ月かけられる。これを利用して、中国地方や新潟県の典型的な中山間地域では夫婦2人の経営で10~30ヘクタールの耕作を実現している例がある。

都府県の米作農家の平均0.7ヘクタールから比べると、破格の規模である。この米を冬場に餅などに加工したり、小売店や消費者など需要者向け販売活動も行ったりすれば、通年で労働を平準化できる。平担で農作業を短期間で終えなければならない平均10ヘクタール程度の北海道の水田農業より、コスト面で有利になるのである。

農作業平準化のイメージ

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