日本農業は世界に勝てる

高齢化は「農業の発展」のチャンス キヤノングローバル戦略研究所 山下一仁氏

技術

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

戦後70年続いた「農業弱体化政策」を転換すれば、日本の農業の高い潜在力が花開き、TPP(環太平洋経済連携協定)にも対応できる強い農業が生まれる。最有力なのは米の輸出だ。ただし、農業を強くするには、農地集約による大規模化を進めていく必要がある。

コストが下がれば、収益は向上する。米などの土地利用型農業の場合、その一つの手段が農地集積による規模拡大である。

しかし、日本の場合、農地面積が多くなれば、それだけでコストが十分に下がるかというと必ずしもそうではない。「零細分散錯圃」という問題があるからである。

零細分散錯圃とは、一農家の経営農地があちこちに分散している実態である。これは、一つの場所に農地がまとまって存在していると自然災害を一気に受けてしまうため、危険分散を図るとともに、上流と下流に各農家の水田を分散させ、公平な河川水の利用を行わせるとの観点から編み出された、江戸時代の知恵の産物である。

しかし、この古い時代の知恵が農業の近代化、合理化を著しく阻害している。現在比較的規模の大きい農家でも、点在している農地を借りて規模拡大しているために耕作地が点在している。2006年の農林水産省の調査によれば、調査経営体202の平均を見ると、経営面積は14.8ヘクタール、これが28.5カ所に分散しており、1カ所の面積は0.52ヘクタール、最も離れている農地と農地の間隔は3.7キロメートルとなっている。

圃場(ほじょう※)が分散していると、機械の移動に多大な時間が必要となる。これは労働コストを増加させるだけではなく、播種、田植え、収穫などの作業適期が短期間に限られる農作業の場合には作業時間の減少となるため、規模拡大は進まなくなる。また圃場が小さいと、狭いところで機械を操作しなければならず、労働時間・コストが増加する。

(※)農産物を栽培する田畑

同じ農地面積でも、四隅の数が少ないほど、すなわち、圃場の規模が大きく数が少ないほど(例えば10アール×10圃場よりも1ヘクタール×1圃場のほうが)労働時間・コストは減少する。

これは、私が新潟の篤農家から聞いた言葉である。ある農業生産法人は、「1ヘクタールの畑1枚」と「10アールの畑10枚」では、面積は同じなのに生産コストは30%も違うと述べている(農林漁業金融公庫『AFCフォーラム』2006年12月、7ページ)。

米については、その生産費調査から、10ヘクタールで規模の利益はなくなるという主張がある。規模を拡大しても限界があるというのだ。しかし、これは零細分散錯圃が大きな原因であり、一つに圃場がまとまれば、さらに規模を拡大してもコストは低下していく。

現に、農地が分散せず連続している環境で、100ヘクタールまで規模を拡大している鳥取県の米作経営者がいる。これらの農家からすれば、日本で大規模農業と言われる秋田県大潟村の20ヘクタール規模の農家でさえ、規模が小さいという。

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

技術

新着記事

もっと見る
loading

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。