良い値決め 悪い値決め

「原価率300%」俺のイタリアンの謎 田中 靖浩氏

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「原価率300%」は、まさにサプライズ。このニュースが報じられるやいなや、かなりの話題になりました。孫子の兵法にいわく「およそ戦いは、正を以て合し、奇を以て勝つ」。敵と対峙するときは正規の作戦を採用し、敵を破るときは奇襲作戦を用いるべし、との教えです。

宣伝費と考えれば安いもの

「原価率300%」という価格は、「戦いは奇を以て勝つ」を地で行く、サプライズ・プライシングです。このメニューは1日20食限定。この約1000円のメニューを売るたび「1個2000円の損」が出ることから、1日あたりで計算すれば毎日「4万円の損」が出ることになります。

この「1日4万円の損」の実態は、「広告宣伝費」であると私は思います。この話題が報道されただけでかなりの話題になり、また実際に食べたお客さんの話が口コミで伝わります。効果絶大な広告宣伝費だと考えれば「1日4万円の損」など安いもの。いまどき「1日4万円=ひと月120万円」では大した広告が出せませんからね。

こうした、枠にとらわれない柔軟な発想は見習いたいものです。わざわざ「赤字」をネタにして話題をつくり、ウェイターまで「原価の高い料理を選んでくださいね」と盛り上げるこのお店、まことに恐るべし。

「無料!」にしても「原価率300%」にしても、そのメッセージだけでお客にサプライズを届け、店に足を向けさせる強烈なインパクトを持ちます。このような「心地良いメッセージ」でお客を動かすプライシングを「ここプラ」と呼ぶことにしましょう。

「O%OFF」や「半額」ではもはやお客の心を動かすことはできません。「ここプラ」を使って、お客さんに「気持ちよく」高く買ってもらう手を考えたほうが良さそうです。

田中 靖浩著 『良い値決め 悪い値決め』(日本経済新聞出版社、2015年)第6章「顧客に心地よいサプライズをつくる『ここプラ』」から
田中 靖浩(たなか やすひろ)
田中公認会計士事務所所長。東京都立産業技術大学院大学客員教授。

1963年三重県四日市市出身。早稲田大学商学部卒業後、外資系コンサルティング会社を経て現職。中小企業向け経営コンサルティング、経営・会計セミナー講師、執筆を行う一方、落語家・講談師とのコラボイベントも手がける。難解な会計・経営の理論を笑いを交えて解説する「笑いの取れる会計士」として活躍中。主な著書に『実学入門 経営がみえる会計』『40歳からの"名刺をすてられる"生き方』『クイズで学ぶ孫子』(共著)ほか多数。

田中靖浩公認会計士事務所 http://www.yasuhiro-tanaka.com/。

キーワード:経営、企画、営業、人事、経営層、管理職、プレーヤー、マーケティング、人材、研修

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