それにしても偉大な「無料!」のメッセージパワー。一方で、変動費の大きいビジネスでは、何かほかに手はないものでしょうか? お客さんに強烈な印象を残すようなメッセージ......。先日、まさにそんな例を見つけました。
意表突いた「俺のイタリアン」のメッセージ
「ぜひ原価の高い料理を選んでくださいね」。その言葉に、私はギョッとしました。レストランのウェイターから、こんなメッセージを聞いたことがありません。
私も「この料理、原価はいくらだろう?」と想像することはよくあります。でもそれは自分で想像するだけです。ぜったい店の人に聞くことはありません。原価はお店にとって、もっとも内緒にしておきたい数字です。注文を取りに来たその店のウェイターは、客の私に向かって堂々と「この料理が一番原価が高い」と宣言したのです。私は軽いカルチャーショックを受けました。
その店は「俺のイタリアン」です。ブックオフから飲食業に転身した坂本孝社長が経営する「俺の」イタリアン・フレンチは、「一流シェフの料理を立ち席で楽しむ」新しいスタイルを提案。美味しい高級料理を安く食べられると評判になり、どの店も行列ができる賑わいです。
東京から始まった「俺の」イタリアン・フレンチは、福岡、大阪にも出店していきました。大阪での出店にあたっては、なんと「原価率300%」の看板料理「活きあわびと生うにのゼリー寄せキャビア添え」を開発したそうです!
ふつうレストランでは、売価に対して30%の原価率が標準的な数字です。「原価率300%」ということは、売価に対して原価が3倍。1000円の売価に対して原価が3000円です。ということは、1個売るたび「1個の損」が2000円出ます(図表3)。
図表3 原価率300%のメニュー