孫子・戦略・クラウゼヴィッツ

すべての戦略には使うべき状況がある 中国古典研究家 守屋 淳

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すべての戦略には使うべき状況がある。ビジネスやスポーツ、人生の勝負時、受験やファイナンス――。いまに生きる私たちが、そこで真に生かせる戦略とは何か。東洋戦略論のバイブルとされる孫武の『孫子』と、西欧戦略論の雄であるクラウゼヴィッツの『戦争論』を対比しつつ、古典の叡智を現代に生かす方程式を紹介する。

状況と戦略とのマッチング

『孫子』と『戦争論』という東西の二大戦略書の対比、そして他のジャンルにおける戦いのノウハウとの関連を分析してきたが、その過程を通してはっきりと浮かび上がってきたのは、それぞれの戦略書や戦略的発想には、それが前提とした状況による限界と使い道がある、ということだ。これを格言風に表現するなら、

「すべての戦略には使うべき状況がある」

となる。そして、この格言からは、戦略全般に関する次のような疑問が生まれてくる。

「ある状況では、どんな戦略が参考になるのか、といった基準は立てられるのか」

本書の締めとして、この問いに対する筆者なりの答えを出していきたい。

まず大前提として、前章においてそもそも競争とは、

(1)どこで戦うかを決める局面
(2)すでに決められた評価基準の達成度や、第三者の支持をめぐる「競」の局面
(3)お互いを損ない合う「争」の局面

の3つの機軸があることに触れた。このうち「戦略」が特に重要になってくるのは3の局面になる。そこで、ここでは幾分かでも「争」の要素の入っている状況における戦略の分類を考えていきたい。

では、分類の軸に何を持ってくるのか。筆者は、『孫子』と『戦争論』との対比の道筋から、両者の前提の違いをそのまま軸にすることによって、戦略を分類することを提案する。

この軸を採用する利点とは、結局、その基準のどこに、各々の直面する状況が位置するかによって、採用する戦略自体が大きく様変わりする点だ。

まず「ライバルの数」。

1対1とライバル多数とでは『孫子』と『戦争論』のマイナス面の話にも明らかなように、使うべき戦略が180度変わってくる。

さらに、「ライバル多数」と一口にいっても、その数が一桁の場合と、数十や数百と膨らんでいく場合とでは、戦略的発想も大きく異なってくるのだ。

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