戦略思考の鍛え方

構造的課題が未解決のまま、日本は混沌モードへ 冨山和彦氏、岸本光永氏

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ここ数年の状況を振り返ってみよう。米国発のリーマン・ショック、その後に続く欧州危機や超円高といった経済危機の余波が冷めやらぬ中、東日本大震災と原発問題が発生し、日本はまさに未曾有の"有事モード"にあった。

その後、政権の座が民主党から自民党・公明党に移り、安倍晋三首相は「大胆な金融政策」「機動性ある財政出動」「民間投資を喚起する成長戦略」という「三本の矢」を核とした、いわゆるアベノミクスによる経済浮揚に取り組んだ。

特に一本目の矢である「大胆な金融緩和」は、新興国の成長を背景とした世界経済の回復と相まって、株式市場と(主に大企業を中心とした)企業業績回復をもたらし、現在、日本経済は一定の落ち着きを取り戻している。

また震災・原発問題も、廃炉・住民補償・原発再稼働などの問題は完全解決からは程遠い状況にあるが、混迷を極めた当時からすれば、中長期的な視点を踏まえた取り組みも進められる状況になったと言えよう。

つまり、この3年の間に、日本は"有事モード"から"平時モード"に移行したかに見える。

しかし本当に"平時モード"なのだろうか。日本の将来に直結する構造的課題は何も解決されていない、というのが私の印象だ。むしろこの数年の環境変化により、より事態は深刻化していると言える。

また、グローバル化の進展は、リーマン・ショックのようなある地域で起きたイベントリスクが、あっという間に世界中に伝播するリスクを拡大させている。疫病、テロなど、危機の芽となるイベント要因は後を絶たない。

そもそもリーマン・ショックとは、米国の低所得者向けの住宅ローンのバブル崩壊である。それがリーマン・ブラザーズの破綻を通じて、あっという間に世界経済全体を大危機に陥れた。

その後の世界は、米国をはじめ「異次元の金融緩和」を続けている。現在、米国は必死に金融政策の正常化を模索しているが、日本を含め、他の多くの地域では、さらに緩和を進める気配もある。バブルとは、人間の体で言えば血液に相当する貨幣の供給量が過大で、動脈硬化を起こした部分にできる動脈瘤のようなものである。これだけ世界中でお金を刷っていれば、むしろ次のバブルがどこかで起きている確率は高い。世界のどこかで次の動脈瘤が破裂してもおかしくないのである。

その意味で潜在的な有事が去ったとは決して言えない。むしろ経営者は、そんなリスクを抱える世界の中で、前に進まなくてはならないのである。"有事モード"から先が読めない"混沌モード"に移ったというのが正確な時代認識だろう。

そんな混沌モードの時代において、以下では、特に着目すべき二つの課題を挙げてみたい。

大きな課題1:人手不足時代の到来とローカル経済圏の低い生産性

現在、日本経済は、「G(グローバル)の経済圏」と「L(ローカル)の経済圏」に分かれている。Gの経済圏は、最先端の技術などを持ちグローバル市場で戦う、製造業を中心とした企業が活動する経済圏だ。一方、国内や地方市場において、小売や飲食などのサービス業を営む企業により形成される経済圏がLの経済圏である。

実は、日本においてGDPや雇用の7~8割以上を占めているのは、このLの経済圏である。しかし、このLの経済圏の生産性が国際的に見ても極めて低いことが、日本経済における大きな課題なのだ。

さらに、ここ数年、地方においては人手不足が急激に進行している。私が経営に携わる東北地方のバス会社においても、バスの運転手を含む従業員の採用が難しくなっていることを実感している。

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