戦略思考の鍛え方

混沌の時代だからこそ経営の基本に戻れ 冨山和彦氏、岸本光永氏

経営

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

生産性を革命的に高めるためにも、デジタル革命の荒波を生き抜くにも、経営の根本を押さえつつ、必要であれば、その基本に照らして理にかなったダイナミックな戦略転換を敢行しなければならない。混沌の時代だからこそ、バック・トゥ・ザ・ベーシック、経営の王道たる基本が大事なのである。

前回挙げた二つの課題(※)をはじめとして、日本経済や社会における課題は構造的かつ複雑なものばかりだ。その様な課題の解決を図っていく上では、正しい「意思決定」と「実行」ができるリーダー人材が不可欠となる。

(※)二つの課題とは、「人手不足時代の到来とL(ローカル)経済圏の低い生産性」と「迫りくるデジタル革命最終章の到来と破壊的イノベーション」を指す。詳しくは『構造的課題が未解決のまま、日本は混沌モードへ』を参照

その意思決定と実行を裏打ちする素養が「戦略思考力」と「人間力」である。特に課題が複雑であるほど、問題の本質を洞察し、適切な意思決定を行うための戦略思考の重要性が高くなる。誤った意思決定に基づく実行は、誤った結果しかもたらさない。

しかしながら、今の日本には、そのような思考力を持つリーダー人材が圧倒的に不足している。これは、経済が右肩上がりの時期に、企業が調整型人材ばかりを育ててきたこと、またバブル崩壊後も戦略的思考と決断力を持ったリーダー人材を育成することを怠ってきたツケである。

この傾向は大企業のサラリーマン経営者はもちろん、中小企業でも2代目、3代目と創業期から世代が下ってきたオーナー企業には多く見られるパターンである。やはり繁栄の時代は、性格温厚で、物わかりの良い、品の良い人材が好まれるし、育ちが良い人々はそのようにしつけられる。逆にいざと言う時に「あれか、これか」の鮮烈な決断を血も涙もなく行う能力が鍛えられる環境は失われていくのだ。

この人材面におけるギャップを解消するためには、なにより個々人の研鑽がその土台となる。

個人のPDCAを回す

「戦略思考力」は誰でもスキル(≒技法)として身につけることができるものである。ただしスキルであるがゆえに、ただ一読しただけでは身につかないという認識が重要である。運動であれビジネスであれ、スキルの習得には"実践"と"反復練習"が基本なのだ。

書店に足を踏み入れれば、ビジネススキル本が棚に溢れかえっている。であるにもかかわらず、高いスキルを備えた人材が顕著に増加している訳ではない。それは、多くのビジネスパーソンに、この実践と反復練習といういわば"体育会系的"な認識が欠けているからである。

とはいえ、まずは本を十分に読み込み、説明されている方法論や視点について良く理解してほしい。その上で、身の回りの事柄に当てはめて考えてみよう。経営者であれば、自分の会社の問題、会社勤めの方であれば担当業務における課題、また新聞や雑誌で目にする企業や政治の問題でも良い。

その課題はどのような示唆を持つのであろうか? また、見えてくる解決策としてどの様なものがあるのだろうか? まずは、方法論の基本的な型に則った上で、自らの頭で徹底して考え抜くことが肝要である。

その上で、自分の立場で実行できると思えることは、臆することなく実行してほしい。結果については想定通りとなることもあれば、そうでないこともあるだろう。いずれの場合でも、その結果を導いた要因を客観的に振り返ってみることが重要だ。

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

経営

新着記事

もっと見る
loading

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。