良い株主 悪い株主

良い株主は社会全体の利益を考える みずほ証券 エクイティ調査部 チーフ株式ストラテジスト 菊地正俊氏

経営

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

良い株主は、シェアホルダー、すなわち、自らの利益だけを追求するのではなく、ステークホルダー全体の利益を考慮するだろう。

シェアホルダーvsステークホルダーの利益

株主至上主義が容認される米国であれば、株主だけの利益を追求しても、社会的な批判を浴びないだろうが、日本では従業員や社会全体などステークホルダーの利益にまで目配りしないと、社会的な批判を浴びて、株主の利益が打撃を受ける可能性がある。この観点で、ハーバード・ビジネススクールの有名経営学者であるマイケル・ポーター教授が2011年に発案したCSV(共通価値の創造)の考え方が参考になろう。

CSVは、社会課題の解決と企業の利益、競争力向上を両立させ、社会と企業の両方に価値を生み出す取り組みである。CSR(企業の社会的責任)というと、企業収益に関係ない社会貢献と解釈されることがあるが、CSVは社会貢献と企業収益を同時に追求する企業を評価する。社会に役立つような商品・サービスを提供しないと、企業は中長期的に成長できないという意味がある。

キリンホールディングスは足元の業績は低迷しているが、WEBで「キリングループのCSV 社会との共有価値の創造を目指していく」と明確にうたっている。味の素は、事業を通じた社会的課題解決への貢献であり、社会・地域と共有する価値を創造することで成長につなげる「Ajinomoto Group Shared Value(ASV)」を独自に展開している。クボタの木股昌俊社長は、「果たして農機だけ売っていていいのかと考える。世界の食料や水、環境に貢献する会社になりたい」(日経ビジネス、2015年10月5日)と述べたが、これはまさにCSV的な考え方である。

日興アセットマネジメントは、2013年から投資家と企業の絆をテーマに、CSVの観点で評価できる企業に投資するファンドの運用を行っている。日興のCSV戦略は、社内アナリストが、(1)ESG(環境、社会、企業統治)、(2)市場競争力、(3)財務の3点から、カバーする全銘柄にCSVポイントを付与する。ファンドマネージャーがCSVの評点を軸に、期待収益率、バリュエーション、業種配分などを考慮して銘柄を選定する。

CSVは、コンセプトは素晴らしいものの、数値化するのが難しいとの指摘がある。企業のCSVを見極めることができる投資家・株主が良い投資家・株主といえよう。日興アセットマネジメントで、CSVファンドを運用している鎌田憲彦ファンドマネージャーは、「良い株主は、中長期的な視点で企業の持続的成長を評価し、支援するとともに、機関投資家として受益者の資産拡大を両立させる株主である」と考えている。

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

経営

関連情報

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。