BCG流 戦略営業

あの人材紹介会社が営業改革を成功させた理由 ボストン コンサルティング グループ 日本代表 杉田 浩章氏

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出口の見えない悪いスパイラル・ループに陥り、旧態依然の営業が考える「あるべき姿」の誤謬から抜け出せずにいる営業組織が多い一方で、そこからうまく抜け出せた企業もある。今回は、その好例であるリクルートエイブリック(現リクルートエージェント)のとりくみを紹介する。

営業改革プロジェクトの発足

リクルートエイブリック(2006年にリクルートエージェントへと名称変更。これ以後は、現名称のリクルートエージェントを用いる)は、リクルートグループの人材紹介会社である。規制緩和を受けて1977年に他社に先駆けて転職エージェントとして市場を掘り起こし、業界トップの地位を築いてきた。しかし2001年から2002年頃から、ITバブル崩壊の影響や競合企業の成長などにより、業績が伸び悩むようになった。このような中でリクルートエージェントの経営トップに就任した新山氏(仮名)は、親会社のリクルートと同じように、「価値マネジメント」という考え方を導入すべきだと考えていた。

親会社のリクルートでは当時、全社を挙げて、顧客への提供価値を言語化・数値化してマネジメントする試みが推進されていた。その背景にあるのは、「売上げとは、顧客がその商品やサービスに価値を見出していることの結果である。したがって、追求すべきなのは、売上げではなく、顧客に対する価値を高めていくことであり、そのような価値の経営こそがマネジメントの本質である」とする考え方だ。

しかし、グループ全体でこの考え方が浸透しているわけではなかった。それまで、増益であれば、本社は子会社の経営に細かなところまで口を挟まないという方針をとってきたからである。リクルートエージェントは、どちらかといえば「数字の量」を追う発想で経営が行われていた。

リクルートエージェントが手がける転職エージェントというビジネスは、就職を希望する個人と求人ニーズのある法人クライアントをマッチングさせるサービスを行う。同社の営業部隊も、求職者に対応するキャリアアドバイザー(以下CA)と法人営業を行うリクルーティング・アドバイザー(以下RA)で構成されている。

業界内には多数の個人エージェントが存在することからもわかるように、自分の才覚と努力とやり方がかみ合えば十分やっていける人も多い。特に、生身の人間を相手にするため、営業のやり方は個人ごとに千差万別であり、結果さえ出せればそれが是であると考えられてきた。リクルートエージェントでも、CAやRAはどれだけ多く案件に対応したかで評価される仕組みになっていた。

量的な結果を出すためには、母数そのものを拡大する、あるいは、母数を変えずに比率を高める、という二通りの方法論が考えられる。市場の成長期にはビジネス規模の拡大がテーマとなるので、自然と母数拡大を目指すものだ。そうすると、登録している求職者の中で就職先が決まらない人や、法人にしても求人を行っても思うように紹介してもらえない案件が増えてしまう可能性があるが、母数そのものが拡大していれば、そのような機会ロスには気づきにくい。とりわけ、いちから市場を創造してきたリーダー企業はそうした罠にはまりやすい。

そのうえ、リクルートエージェントのCAの間には、求職者の就職先が決まること以上に、個人の話を丁寧に聞き、人生相談の相手になることに誇りを見出しているような節がありそうだと、新山氏は感じていた。求職者がもっとも期待しているのは、相談にのってくれることよりも、希望する会社への就職をサポートすることであり、それこそがリクルートエージェントの提供すべき価値ではないだろうか。

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