民主党のアメリカ 共和党のアメリカ

トランプ現象は「突然変異」にあらず 冷泉 彰彦氏

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ヒラリー・クリントン氏とドナルド・トランプ氏による米大統領選の本戦が間近に迫ってきた。今回の選挙はさまざまな意味で異例の展開をたどってきた。「連邦政府の正義」を信じる民主党、懐疑心と独立心の共和党――。建国以来の二大政党の対立軸が大きく揺さぶられている。

従来の対立軸から逸脱する候補者

4年に1度やってくる夏季オリンピックの年は、同時にアメリカの大統領選挙の年でもある。

このアメリカの大統領選挙は2000年以降だけでも、以下の5回のような様々なドラマを生んできた。

「2000年......G・W・ブッシュ(共和、新人)対ゴア(民主、新人)」

「2004年......G・W・ブッシュ(共和、現職)対ケリー(民主、新人)」

「2008年......オバマ(民主、新人)対マケイン(共和、新人)」

「2012年......オバマ(民主、現職)対ロムニー(共和、新人)」

「2016年......ヒラリー・クリントン(民主、新人)対トランプ(共和、新人)」

このように両党の候補が一騎打ちとなる本選はその年の11月初旬だが、そこへ至るまでの選挙戦も長い。政党が候補者を絞り込む「予備選」のプロセスが「選挙の年の1月から」あり、さらにその前哨戦を含めると丸2年近くの息の長いレースになる。

ここで言う政党とは民主党と共和党の2つであり、大統領選挙という大がかりなシステムは正にこの両党の対決に他ならない。この点から見ても、アメリカの政治制度を「二大政党制」の代表的な例だとすることに異論を唱える人は少ないだろう。

この「二大政党制」は明らかな対立軸を持っている。

民主党は「リベラル」の党であり、福祉を中心とした「大きな政府論」を推進するとともに、国連中心外交など「国際協調」の外交姿勢を取っている。

共和党は「保守」という看板を掲げて、減税と歳出抑制という「小さな政府論」を党是としている。また、外交姿勢としては「孤立」の心情を核に持ちながら20世紀には「反共」、そして21世紀には「反テロ」という価値観から世界情勢への介入を行ってきた。

だが、2016年の選挙では、その対立軸が大きく動揺している。

2016年の前半の段階では次の3人の候補が選挙戦を盛り上げていた。そして、そのそれぞれは、全員が伝統的な「民主党と共和党」の対立軸から逸脱していたのである。

ドナルド・トランプ(共和)は、予備選を圧倒的な強さで勝ち抜いていったが、2000年から8年間のブッシュ時代に主流だった「小さな政府論」「軍事タカ派」「宗教保守主義」の3原則をほとんど無視している。

ヒラリー・クリントン(民主)は、「大きな政府」と「国際協調主義」からは逸脱していないが、「多国籍企業を中心とした21世紀のアメリカ経済」の代弁者であるし、ブッシュ時代の「軍事タカ派」路線を根底から否定しているわけではない。いわば中道主義であって、それゆえに「格差社会における富める者の代表」というイメージを持たれて苦しんだ。

バーニー・サンダース(民主)は、そのヒラリーの2016年前半の予備選におけるライバルであったが、彼は「政府一元化の国民健康保険」「公立大学の無料化」「富裕層課税強化による再分配」を強く主張し、「自分は民主的な社会主義者」だと公言してはばからなかった。その立ち位置は「本格的な政権担当政党」として、長い伝統を持つ民主党のイデオロギーからはかなり左に寄っている。

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