「ありがとう」と言われる会社の心動かす物語

顧客に愛される、カルビーのクレーム対応 パッションジャパン 三枝理枝子 氏

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お客様は何に付加価値を感じ、対価を支払ってくれているのでしょうか。現代のサービスは「モノ」売りから「コト」売りの時代を経て、「こころ」を通わせた体験や癒やし、「こころ」の潤いを提供することに変わってきています。

では、お客様と「こころ」を通わせる体験を実現するには、具体的にどうすればいいのでしょうか。サービスの良さで選ばれている企業は、選ばれるために組織的かつ戦略的に、実は何をしているのでしょうか。本連載では、お客様から心からの「ありがとう」が聞こえてくる、実際に本当にあったエピソードとともにお伝えします。

今回は、カルビーのお客様相談室に寄せられた90歳女性のクレームの話です。クレームは翌日に全社員に伝えられ、社内で波紋が広がるように様々な反響を呼び、顧客への的確な対応につながりました。顧客の本当の気持ちを聞きだして誠実に対応すれば、「これまで以上に買う」と言ってもらえる顧客が多いそうです。

90歳のファン

「フルグラ(フルーツグラノーラ)を気に入っていつも食べているんですが、今回のものは、まるで"おこし"のような塊がたくさん入っていて、今までもいくつかはありましたけど、こんなにおこしみたいなものばかりなのは初めてで、言っておいた方がいいかなぁーと思いまして」

電話をとると、一気にこう話されました。お言葉からすぐに九州の方とわかりました。60代くらいと思われる女性からのお電話でした。

「ご連絡ありがとうございます。ご心配おかけしまして申し訳ございません。いつもご利用くださっているのですね。ありがとうございます。今回は塊が大きく、食べづらかったということでございますね。塊はどのくらいの大きさか、お聞かせいただけますでしょうか?」

私は、ご心配をおかけしたことにお詫びし、塊がどのくらいのものかお聞きしました。詳しく伺ってみると、2、3センチメートルの塊ばかりとのこと。袋を揺すってみても下の方までずっと、そのような塊ばかりのようだとのこと。また、塊ばかりであるほかに、いつもよりフルーツがすごく少ないとのことでした。

フルグラの製造方法について簡単にご説明し、塊については工場で袋詰めしたときにはそのように塊が多い状態にしており、不具合ではないことを案内しました。ただし、フルーツが少ないということについては不具合があった可能性がありますので、残りの中身があれば袋ごとお預かりして製造工場で確認しますと説明。ご報告まで10日以上かかる場合もあることもお伝えしました。

「伝えるだけのつもりで電話したからですね(電話しただけですから)」と何度か遠慮されましたが、お預かりすることになりました。その翌日に、集荷させていただくことを約束しました。また調査の結果については、書面で代わりの商品を添えてお送りすることで、ご了解いただきました。

初めの頃(10年前頃)は受け身だった私も、今では積極的にお客様の問題解決を徹底的にしようという会社の姿勢が身についています。フルグラについての、こちらのお客様の食経験を聴き取っていきました。

フルグラは、もともとは娘さんがお召し上がりだったそうですが、娘さんから「これいいから、食べてみたら」と勧められ、それ以来2年以上毎日昼食に召し上がっているとのことでした。他の会社が出しているものも試してみましたが、カルビーのフルグラが一番おいしいので、今はこれしか食べないともおっしゃっていました。

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