「攻めのガバナンス」実現への道

三井物産「32人抜き」人事は英断か博打か エゴンゼンダー代表取締役社長 佃 秀昭氏

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6月1日に「コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)」が導入された。上場企業に社外取締役を最低2人以上確保することを要請するなど、日本企業に「攻めのガバナンス」を促す内容だ。本連載では、ガバナンス・コード導入を契機に、日本企業が「攻めのガバナンス」を如何に実現できるのかを論じる。前回は「ガバナンス・コードを生かすための8か条」として、総論を概観した。今回から各論である。まずは、世間の注目を浴びた三井物産の「32人抜き社長」を例にとり、指名委員会の役割を考える。

「山下跳び」を上回る

1月20日の記者会見で握手する三井物産の安永新社長(左)と飯島前社長(右)

1月20日の記者会見で握手する三井物産の安永新社長(左)と飯島前社長(右)

三井物産における「32人抜き社長」の誕生は、かつての松下電器産業(現パナソニック)の「山下跳び」(25人抜き)を上回る大抜擢人事であったこともあり、メディアが大きく報道した。執行役員経験が2年だけという安永竜夫氏の経営幹部としての実績や、54歳という若さも話題になった。まずは舞台裏を取材した日本経済新聞の記事(2015年3月20日付)から筆者の興味を引いた部分を抜粋してみよう。

 「3年前から安永を後継候補に入れた」。(中略)会長の槍田が副社長級を後継候補に推したこともあるとされるが、飯島は「新しいビジネスを作るには若い感覚が必要」との持論を崩さなかった。(中略)槍田とは何度か都内のホテルでひそかに会い、考え方を摺り合わせたが、安永指名の意思を明確に伝えたのは1月9日だった。

 飯島が安永に指定した面会時間は1月15日午前7時。場所はホテルニューオータニ。朝食を取りながら後継指名し、驚く安永を「天命と思って受けてほしい」と口説き落とした。(中略)20日午前10時の臨時取締役会では「安永跳び」の議案を見て、誰もが息を飲んだ。

副社長級を後継候補に推したという当時の会長と社長とのやりとりの詳細が不明であるが、それでも「密室性」と「意外性」があるため、大変ドラマティックに感じる。そういえば日本経済新聞「私の履歴書」の社長拝命のくだりも、いつもドラマに溢れている。

さて、この次期社長指名劇はコーポレートガバナンス・コードが導入される前の話である。では、三井物産における社長後継者決定プロセスを、コーポレートガバナンス・コードに適合する形で再現したらどうなるだろう。

もし次期社長指名がコード導入後だったら......

飯島社長(当時)、安永新社長の他にも指名委員長は実在の人物名で記述する。しかしストーリーは全て筆者による完全なフィクション(作り話)である点にご留意いただきたい。

 「3年前から安永を後継候補に入れた」。飯島社長は3年前に「次期社長後継者計画」を始動させていた。まず取り組んだのが、「三井物産社長の要件」を作ることだった。飯島社長は野中郁次郎氏を委員長とする指名委員会を毎月1度開催し、5年後の事業環境を議論し、求められる社長像を固めていった。

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