本格的な人口減少時代の到来によって、不動産市場が大きく変わろうとしています。「不動産格差」は既に全国各地で顕在化していますが、時間の経過ととともにますます開き続けるでしょう。資産化する「富動産」から、マイナス資産となる「負動産」まで、「勝ち組不動産」と「負け組不動産」がはっきりする時代が到来したのです。いま不動産市場で何が起きているのか、これからどうなるのかを探ります。特に住宅市場の「2022年問題」には警戒が必要です。全国の市街地には96万戸、東京都には26万戸分もの住宅用地があります。その多くが東京オリンピック後の2022年、一斉に市場放出され、新築マンションや一戸建てが建設されれば、空き家が大幅に増大する可能性があります。
売り主が解体費を負担する「マイナス価格取引」も
前回の『不動産の9割が下がっていく』で触れたようにアベノミクスによって大きな恩恵を受けた不動産は、ほんの一握りでした。では、なぜそうなるのか。理由は「マネーの一極集中」にあります。
都心や都市部の超一等地はオフィスが林立し、不動産投資信託(REIT)やファンドのマネーが流入しています。日銀は年間900億円のペースでREITを定期的に買い上げています。
2015年には相続税の増税がスタートしましたが、取引価格よりも相続税評価額が低くなるタワーマンションを目指してマネーが流入しました。
国税庁はこうした「タワマン節税」に監視の目を強めています。政府・与党も税制の歪みを一定程度是正する方針ですが、是正の程度は小幅であり、タワマン節税の相対的な優位性は大きく変わらないでしょう。
また、為替が円安傾向にあることも、海外マネーを都心に招来する要因となり、不動産市場にはプラスです。中国当局は資金の海外流出に対する監視を強めており、かつてのような勢いで不動産の「爆買い」が起きる可能性は低いですが、それでも一定の海外資金流入は今後も見込めるでしょう。
一方で、それ以外の不動産は残念ながら今回の上昇サイクルの恩恵を全く受けないどころか、むしろジリジリと下落を続けています。価値ゼロどころか、売り出しても買い手がつかず、売り主が100万円単位の解体費を負担するといった、事実上の「マイナス価格取引」すら見られます。交渉の過程でこのように決まったようですが、もし物件広告に「マイナス150万」と書かれていたらびっくりします。
「不動産はどんなものでも持っていれば資産」という時代は終わりました。さらに言うと、不動産はただ所有しているだけでは固定資産税や維持管理費がかかる「負債」です。所有する不動産をどのように活用できるのか、中身が問われる時代になりました。
例えば、高度経済成長期に造成された、都心から30~40キロ圏内にあるベッドタウン。当時の住宅ローンは7~10%もの高金利にもかかわらず、抽選会に出かけ、先を争うようにして買われました。当時は経済成長とともに不動産価格が上昇し続けていたため、「早くしないとどんどん価格が上がって買えなくなる」という焦燥感がありました。