会社の本質というものをこの目で見ることはできませんが、可視化された事象をつぶさに確認していけば、そこから優れた企業かどうかを見極めるヒントを得ることができます。企業の性格を決める最大の要因は、会社のリーダーである「社長」。ここではまず、そのリーダーの言動についての法則を見ていきます。
自分の任期をつつがなく過ごせばいい
サラリーマン経営者は問題を先送りしやすい
世界に目を向けると、成長企業はフェイスブックもアマゾンもグーグルも、オーナーやオーナーの一族が経営しています。インドなどでも、企業経営者は、ほとんどが会社のオーナーです。
ところが、日本では大企業のトップはたいていが"サラリーマン社長"です。ひと昔前までは日本企業もほとんどがオーナー経営だったのですが、いつのまにか多数決によって民主的プロセスで決まるサラリーマン社長がオーナーを排除してしまいました。
そして、社会の中にそれを問題視する雰囲気はありません。どちらかというと"サラリーマン社長"が普通で、「オーナー経営=ワンマン経営」というネガティブなイメージすらあるようです。実際、トヨタ自動車は、経営陣に豊田家が残っていますが、そのことを指して「変な会社だ」という人もいます。
しかし私は、サラリーマン経営者がトップに就いている企業に対しては、成長を期待しにくいと思っています。問題がある、という意味で「ヤバい会社」が多いのです。
サラリーマン経営者の問題は、まず短期志向で企業を経営しがちなことです。
豊田家ならトヨタ自動車の経営を10~30年単位で、もしかしたら100年先まで考えているでしょう。しかし、サラリーマン経営者の場合、自分が就任している間をつつがなく乗り切れればよいという思考が優先してしまいがちです。
このため、サラリーマン経営者は四半期の業績にこだわり、長期的な視野が欠落しやすくなります。
たとえば、将来を見据えての先行投資を行うといった場合、今期末で交代予定の社長と、任期が決まっていない社長とでは、判断が違ってくることが予想されます。目先の業績を上げたいなら、設備投資をするより、事業の選択と集中によって効率化を図ろうと考えるのが自然だからです。
またサラリーマン経営者は、経営に関する決定事項は書類を固め、「みんなで決めた」という形をつくって自分ひとりが叩かれないように根回しすることも少なくありません。