肖敏捷の忠言逆耳

中国は「穏成長」という看板を下ろすのか? SMBC日興証券 中国担当シニアエコノミスト 肖 敏捷(しょう びんしょう)

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中国では、儒教の教えなどを分かりやすく勉強する手段として、「三字経(さんじきょう)」を使う伝統が残っている。どんな難しい内容でも、1句3文字で簡潔に表現した学習書である。リズミカルに朗読できて気持ちがいい。50年前の文化大革命では「三字経」までも批判の対象とされていたが、今は、子供の国語教育を兼ねて「三字経」を暗唱させる家庭が少なくないと聞いている。

中国の指導者がよく使ってきた「穏成長(経済の安定成長)」

「三字経」の影響があったのか、中国の指導者たちの間では経済政策などを語る際、よく3文字のキャッチフレーズを使う傾向がみられる。例えば、胡錦濤・温家宝政権から、「穏成長」(中国語では「穏増長」、成長を安定させるという意味)という3文字がよく使われた。習近平政権の発足後、李克強首相は相変わらず「穏成長」をよく使うが、その後に、「調結構」(構造調整)と「転方式」(成長方式の転換)が加えられるようになった。

昨年12月に開催された中央経済工作会議では、新たな「三字経」がお目見えした。「去産能」(過剰生産能力の淘汰)、「去庫存」(過剰在庫の圧縮)、「去杠桿」(レバレッジの解消)、「降成本」(経営コストの削減)、「補短板」(ボトルネックの解消)などであるが、それ以降こうした3文字のキャッチフレーズが中国のマスコミ報道などにずらりと並ぶようになった。

中国経済が抱えている問題点と課題をよくこんなにも簡潔に、「中南海文学」としてまとめることができるのか、中国生まれの私はそのすごさに感心せざるをえない(「中南海」とは、中国政治の中枢が所在する北京市内の地名。日本の永田町や官邸に相当)。ちなみに、昨年12月時点で、これらの3文字を総括する意味として、「供給側の構造改革」がすっかり定着した。

しかし、よく見ると、この新しい「三字経」の前にはいつもの「穏成長」という枕詞がない。昨年末段階で、この3文字が入っていないことは、その後、経済政策の方向性を巡って激しいバトルが起こるとの想像があったということだろうか。

4月15日、中国国家統計局が2016年1-3月期のGDP統計を発表した。前年同期比6.7%増と昨年10-12月期の6.8%を下回り、四半期ベースでは2009年1-3月期以来の低い伸び率になったにもかかわらず、この発表を受け、中国国内では楽観論が急速に広がった。実際、GDP統計発表の直前に開催された経済情勢分析会では、第1四半期のGDP成長率が予想以上に強く、景気が回復に向かっているとの見方が既に広がっていた。

さらに遡ってみると、3月20日、北京で開催された経済フォーラムのゲストとして講演した張高麗副首相は、「第1四半期の中国経済がよいスタートを切る(開門紅)可能性が高い」と述べた。

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