肖敏捷の忠言逆耳

爆買い後のインバウンド、香港の教訓を生かせるか? SMBC日興証券 中国担当シニアエコノミスト 肖 敏捷(しょう びんしょう)

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円高や中国側の関税強化などを背景に、日本での中国人観光客による「爆買い」が息切れ、インバウンドの行方を懸念する声が高まりつつある。爆買いである以上、いずれ終息することになるのだろうが、爆買いに頼り続ければ、インバウンドそのものが行き詰まりかねない。爆買い後のインバウンドがどこへ向かうのか、中国人観光客を受け入れてきた「先輩格」である香港の経験と教訓が参考になるかもしれない。

アジア通貨危機後、景気刺激策で中国から香港へ爆買い客

1999年から2005年まで、筆者は日本企業の海外駐在員として香港で働いたことがある。この間、アジア通貨危機後の香港株式市場と不動産市場の暴落、中国の世界貿易機関(WTO)加盟で隣接の広東省が世界の生産工場へ変身、2003年春の重症急性呼吸器症候群(SARS)の蔓延で半年間香港から一歩も出られなかったことなど、様々な「歴史の瞬間」を体験した。中でも、中国大陸からの観光客による爆買いの一部始終を目撃したことは、間違いなく1つの貴重な体験だった。

1997年7月1日、香港が英国から中国に返還されたが、中国大陸の市民たちは依然自由に香港へ行くことが許されなかった。中央政府は通行証の発行で香港行きの人数を制限してきた。1997年からの50年間、香港と中国の間では「一国二制度」が適用され、返還した後も、香港人が中国の存在をあまり意識せず、従来通りの生活を続けることができた。当時、香港空港の入国審査で北京語を使い、田舎者扱いされたと思ったのだが、英語が苦手な筆者のコンプレックスに起因する勘違いだったかもしれない。

しかし、アジア通貨危機以降、金融と不動産に頼っている香港経済が深刻な打撃を受け、雇用悪化などの悲観的なムードが漂い始めた。こうした中、景気刺激策の切り札として、大陸からの観光客をもっと増やすよう、香港政府が中央政府に要請した。当時、筆者は香港の英字紙の取材を受け、中央政府が規制緩和を実施したら、香港を訪れる大陸の観光客が倍々ゲームで増加すると述べた。筆者のコメントがその新聞の一面に掲載されたのは嬉しかったが、1年後、この担当記者からこんなエピソードを聞かされた。

当時、このコメントを見た観光業界の関係者から、「あの大陸出身のエコノミストの予測が当たるはずはない」との電話を受けたそうだ。しかし、結果的に筆者の予測が見事に当たり、例の関係者からこの記者宛に「彼はどうやって予測できたの? 一回食事でもしよう」との誘いがあったという。もちろん、食事の誘いは丁重に断ったが、「当たったのはたまたまだが、私は大陸出身だから香港人以上に大陸観光客の気持ちが分かっているかもしれない」との伝言をこの記者に預けた。

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