日経ソーシャルビジネスコンテスト関連特集

「ソサエティー5.0」時代のソーシャルビジネスとは? 公共サービス・地方課題も革新の好機

ソーシャルビジネス

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社会的課題をビジネスの手法で解決するソーシャルビジネス。優れた取り組みを表彰する「日経ソーシャルビジネスコンテスト」は、地方創生賞にコラボプラネット(福岡県糸島市)、海外支援賞にNPO法人AfriMedico(東京・港)を選出。3月3日の表彰式では次世代のソーシャルビジネスをテーマに討論会を開いた。

■第1部、キーノート鼎談

守山氏「政府に本部設置後押し」

横田氏 自社の利益だけを優先する時代は終わり、社会課題に向き合った行動を考えないと、マーケットの中でも国際社会の中でも生き残れないという危機感が広がっている。ソーシャルビジネスを軸に起業しようという人も増えている。ソーシャルビジネスを軌道に乗せ、あるいは広げるためにはどういう視点が必要か。SDGs(貧困の撲滅など国連が策定する持続可能な開発目標)時代のソーシャルビジネスを考えてみたい。

守山氏 政府は2017年、首相を本部長とするSDGs推進本部を設置し、日本版SDGsアクションプランを策定した。次世代の社会経済システム「ソサエティー5.0」の活動と連動させ、地域創生や街づくりの切り口にできないかという議論が進んでいる。

約1500社のうち約20%がSDGsを参考にしているという調査結果もある。経済産業省も関係省庁と連携し、ソーシャルビジネスを後押ししている。生産性向上に向けたIT(情報技術)導入支援制度もその一つだ。

更家氏「投資や人材 呼び込みたい」

更家氏 お金を暴力的に使っていると資源が枯渇する。世界中の人が日本と同じ生活をすると地球は2.4個、米国と同じ生活をすると5.3個必要だ。

二宮尊徳は『経済なき道徳は寝言、道徳なき経済は退廃』と言った。どちらも必要。SDGsを考えた時、ビジネスを通じた持続可能性を実現するために、投資や人材を呼び込んでいきたい。

弊社もビジネスの一部をこういう活動に置き換え、自己検証しながら進んでいこうと考えている。ボルネオの自然保護活動やウガンダの衛生向上などに取り組み、ボルネオの基金には「ヤシノミ洗剤」の売り上げの1%を寄付している。

藤野氏「継続できる仕組みが重要」

藤野氏 「どういう株が値上がりするのか」とよく聞かれるが、中長期的には、個別企業の株価は営業利益とほぼ一致する。インターネットの普及もあり、企業が継続的に売り上げと利益を出すためには、客、環境、従業員などに細かく目配りしなければいけない。ESG(エンバイロンメント・ソーシャル・ガバナンス)的な経営をしない企業は成長できない社会だ。

諸外国に比べ日本企業に競争力がないのは、ESGの弱さだという議論がある。特にソーシャルのS。障害者雇用比率や女性管理職比率は世界的にみても低水準だ。逆にいえば、これらを改善すれば、もっと伸びしろがある。

ESGをより大切にしようというのが社会全体の流れで、ソーシャルビジネスもその一つだ。実は日本の一般的な会社もソーシャルビジネスの会社も社会課題を見つけて解決するという意味では何ら変わりはないが、収益を上げようとする企業ではなかなか埋められない課題を埋めていくのがソーシャルビジネスだ。ただ、ボランティアのように誰かの犠牲の下に成り立つのではなく、ビジネスという継続する形にするのがポイントだ。

横田氏 上場企業はどうしても毎年利益を出さないといけない。「自己資本利益率(ROE)8%」のような指標もある。一方でソーシャルビジネスはそう簡単にもうからない印象がある。

藤野氏 ROEが高い会社が良い会社だというのは、その通り。ROEが低いのは無駄が多い、無駄が多いなら本業に集中しましょう、ということになる。それに対しては、社会課題により集中するということで、(それを実行した)会社が伸びていくことになる。

社会課題を解決したソーシャルビジネスには付加価値が生まれる。障害者がより働きやすくなった、貧困層がより仕事がしやすくなった、虐げられていたと思っていた人たちが生き生きとしてきた、といったことだ。その結果、支援金が集まるといったこともあるだろう。大切なのは成果を出し、世の中に必要な存在だということを開示していくこと。開示し、説明し、堂々とお金をもらうという流れが重要だ。

 ◆鼎談参加者の略歴
 守山宏道氏(もりやま・ひろみち) 95年に通商産業省入省。国際エネルギー戦略推進室長などを歴任。17年から現職。
 更家悠介氏(さらや・ゆうすけ) 76年サラヤ入社。日本青年会議所会頭、関西経済同友会幹事など歴任。98年から現職。
 藤野英人氏(ふじの・ひでと) 国内外でファンドマネジャーとして活躍。03年にレオス・キャピタルワークス創業。
 横田浩一氏(よこた・こういち) 日本経済新聞社を経て、11年に横田アソシエイツを設立。15年に慶応大学特任教授に就任。

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