模倣の経営学

第2、第3の「KUMON」はなぜ出ないか 早稲田大学商学学術院教授 井上達彦氏

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「模倣は創造の母である」と言われる。トヨタもセブン―イレブンも、優れた企業を「真似て、超える」ことで成功した。お手本とする他者の本質を見抜き、自社で生かせる「儲かる仕組み」を抽出する創造的な模倣の方法を紹介する。

■生徒に「気づかせる」ノウハウ

世の中には「模倣できそうで模倣できない」という会社がある。興味深いのは、一見すると模倣しやすいように見えるビジネスほど、模倣が難しくて大きなやけどを負いやすいということだ。そんなビジネスとして、公文教育研究会(以下KUMON)に着目する。

KUMONは、日本の教育産業において、独自のポジションに位置している。それは、KUMONが提供する価値が、受験勉強のためのものではないからである。学習塾や進学塾のように「教える」ということで価値を生み出すのではなく、KUMONは、むしろ自分で「気づかせる」ということを通じて生徒の能力を高めようとしている。

もちろん、日本の教育産業において、受験対策へのニーズは強く、ビジネスとしても重要な市場である。KUMONは、その試験対策向けに教材を作っているわけではないので、小学校の低学年から通っていても、受験直前になって塾に乗り換える生徒も少なくはない。

しかし、KUMONをやめて受験塾へ移った生徒の中には、中学校に入ってから再び、KUMONに戻ってくる人もいるそうだ。このような生徒は、KUMONで学ぶ力を養い、進学塾では受験のためのテクニックを習っているという。

さらに、公文式の教材は、さまざまな方面で活用されている。障害児への知育教育、認知症の進行の抑止と治療、少年院における更生の支援など、実に多様である。

グローバルに見ても、KUMONは、独自のポジションに位置づけられる。KUMONの教材は、それ固有のものであるがゆえに、行政(日本で言えば文部科学省)の教育プログラムやカリキュラムに過度に縛られることはない。

また、その国や地域の受験制度や試験のあり方に最適化されたものでもない。純粋にスモールステップで学力を伸ばすために作られたものである。そのため、その国や地域のニーズに合わせて、柔軟に活用することができる。世界各地域の脈絡を越えて価値を生み出すことができるのである。

もし、KUMONの教材が「自学自習」ではなく、日本の受験勉強に最適化されていたら、何が起こっていただろうか。特定の国の教育プログラムやカリキュラムに最適化されていたら、今のような広がりがあっただろうか。

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