経営トップのための"法律オンチ"脱却講座

ケース32:法務部って何するところ?必要なの? 弁護士・ニューヨーク州弁護士 畑中 鉄丸 氏

経営

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

「有事」の蓋然性、ダメージ、コスト

ここで、重要なことは、軍事における有事対応が「武器・兵器」の効率的整備運用によって敵を殲滅(せんめつ)することによって安全保障の実を上げることが想定されますが、企業における有事対応は、司法手続であれ、行政手続であれ、私的な交渉であれ、自己の主張や立場の正当性の雄弁に物語る客観的痕跡としての「文書」「記録」を効率的に整備運用することによって、権利を確保・実現し、負担すべきでない義務や責任から免れ、あるいは自らの立場を芳しくすることが想定されます。

その意味では、有事を想定するイマジネーションを強化し、有事において最前線で活動する実働傭兵部隊である外部専門家(顧問弁護士)と良好な関係を構築して後方支援の実を上げることと、有事の際にモノを言う「文書」「記録」を丹念に整備することこそが、法務部の活動として求められる本質的要素といえます。

ところで、米国の軍事組織ないし治安維持組織が、陸海空さらに海兵隊を含めた軍隊に加え、CIA、FBIといった巨大な犯罪対応や治安維持組織がある一方、バチカンやモナコやブータンにおいては、(米国との比較において)小規模な組織しかない国もあります。

スイスは、それほど大国とはいえませんが、4万人の職業軍人と20万人超の予備役から成る軍隊を有し、有事の際は焦土作戦も含めた徹底抗戦によって国家独立を維持するという国家意思を表明しています。他方で、モナコ公国にように、領土防衛はフランスに責任を持ってもらい、「銃騎兵中隊」なる軍隊はあるにはあるが、事実上警備・儀仗部隊しかない、という国家もあります。もっと安全保障が貧弱な国もあります。バチカン市国は、そもそも軍事力は一切もちません。警察力も、永世中立国であるスイスからの傭兵にお願いしています。従前は、教皇騎馬衛兵や宮殿衛兵といわれる衛兵隊がいたようですが、ただのお飾りであり、これすら無駄・無意味ということなのか1970年に廃止されています。

要するに、人生イロイロ、国家もイロイロ、安全保障もイロイロということなのです。国家ですら、安全保障体制設計がイロイロ・ソレゾレということですから、企業組織はより一層自由で適当に決めていいといえましょう。

したがって企業は、それぞれの有事発生の蓋然性と有事の際に生じうるダメージの大きさと懐具合とを相談しながら、適宜自由に決めていけばいいということになります。企業における「富の蓄積」という活動については、売上を上限として、投入コストが導けます(売上を上回るコストを費やしたら、企業組織は持続不能に陥ります)が、安全保障コストはこの種の「経済的合理性による制約」が働きにくく、過大にならないように注意が必要です。

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

経営

新着記事

もっと見る
loading

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。