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ケース32:法務部って何するところ?必要なの? 弁護士・ニューヨーク州弁護士 畑中 鉄丸 氏

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法務部の本質とは

企業であれ、国家であれ、宗教組織であれ、暴力団であれ組織である以上、組織自体が持続可能性を維持しつづけるための原理を内部にもつものです。では、組織が持続可能性を保つためには、何が必要でしょうか。

ここで、もっともわかりやすいスローガンが、明治期の我が国の国是となった「富国強兵」です。これは、欧米列強が隣国を蚕食するような厳しい状況にあって、我が国が国家としての独立性を持続可能するために、社会全体で掲げた端的な組織運営目標です。

この「富国強兵」を、私なりに少し敷衍(ふえん)して解釈しますと(1)富の蓄積と(2)安全保障を組織の持続可能性の要件として喝破し、端的に表現したものと理解できます。この組織の持続可能性確保のための構成要素は、企業にもあてはめることができます。すなわち、企業が永遠に継続するため(ゴーイング・コンサーン)には(1)経営資源を効果的に運用して事業を合理的に展開し、効率的に富を蓄積することと(2)企業内外の敵対勢力(仮想敵を含む)や有害分子から企業を防衛し、安全を確保すること、が必要になります。

ところで、軍事行動を展開する組織が、「目標達成のために最前線に出て、直接的な行動や働きかけを行う実働部隊」と「実働部隊がストレスなく効果的に活動できるための前提や環境を整えるための後方支援部隊」の2つによって構成されることはよく知られた事実です。

そして、この理は、先程、要素分解した(1)富の蓄積と(2)安全保障の2つの企業活動についても当てはまります。

ここで、「(1)富の蓄積」に関する企業内組織としては、(1A)富の蓄積に直接関係・貢献する活動を展開する「営業部隊(実働部隊)」と、(1B)「会計という基準原理に基づく記録管理」を通じた企業内資源のストック(BS)とフロー(PL)の可視化を通じて効率的な資源動員を行う前提や環境を整える「経理・財務部隊(後方支援部隊)」とに分類整理されます。

また、「(2)安全保障」に関しても同様、(2A)企業外の敵対勢力(取引トラブルや法令違反に対する当局による不利益措置など)企業内の敵対分子(労働問題や内部統制問題など)が生じた場合に直接これらカウンターパートと対向して解決を働きかける「外部専門家組織(実働傭兵集団)」と、(2B)企業内活動の言語化・記録化・文書化(株主総会や取締役会の議事録作成)や取引活動の文書化(契約書作成)や治安維持活動(コンプライアンス教育)や危機管理意識の向上改善のための啓発活動(法務教育)を行う「企業内法務部(後方支援部隊)」とに分類整理されます。

以上のような整理をしてみれば、法務部の本質が見えてきます。要するに、法務部というのは、企業の安全保障を担う部署であり、有事において直接カウンターパートと対向して働きかける外部の顧問弁護士とは異なり、平時において、有事を想定しながら、「大事が小事に、小事が無事に」なるよう、文書作成や記録管理を中核としたルーティンを担当する組織、ということになります。

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