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ケース31:不動産保有会社を格安M&A? 弁護士・ニューヨーク州弁護士 畑中 鉄丸 氏

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「京品ホテル」のケースから学ぶこと

「理屈ではそうだけど、実際、従業員がレジスタンス化して、大事になったなんてことある?」「そんなの、退職金上積みすれば大丈夫でしょ」なんて声が聞こえてきそうですが、それは、想像力が乏しいというものです。「京品ホテル」廃業に伴い発生した、資産買収ではない、企業買収にまつわるリスクが衝撃的な形で顕在化したケースをみていきます。

バブル期の経営の失敗に伴う多額の負債に加え、当時話題になった耐震偽装事件で取り沙汰された耐震基準について不足が判明し、改装費の捻出も困難となった京品ホテルを経営する京品実業は、ホテルを担保に債権を売却することを決定し、この債権は、破綻した旧リーマンブラザーズ証券系の関連会社が取得するに至りました。

ホテルを経営する京品実業も債権者も、早急に廃業しホテルを解体して更地にした上で、興味ある事業者に売却し各種整理清算をしていこうという目論見(もくろみ)だったのですが、突然生活の糧を奪われ、路頭に迷うことにもなりかねない従業員としては、唯々諾々(いいだくだく)と応じることなどできません。2008年5月の段階で、経営サイドから従業員に対し、「退職金40%上乗せ及び、有給買取を条件に10月20日の廃業と解雇」を通告しました。しかしながら一部の従業員は、この通告を争い、労働組合を結成し、団体交渉を申し入れました。

経営者は通告に従い10月20日にホテルの廃業と従業員の全員解雇を正式に発表し、すぐさま臨時株主総会で会社解散し、以後は清算法人となりました。従業員サイドは、これに対して地位保全の裁判を起こすとともに、廃業の翌日から、元従業員が"自主営業"を開始。会社側は、不法占拠であり保健所の許可を得ていない無許可営業と抗議しますが、そのころには、メディアが連日報道し、異常性と事件性だけが世間の耳目を集め、「どっちもどっちだが、しいて言えば、従業員が気の毒で、企業側は冷酷」というイメージで語られるような状態に陥ります。

京品実業サイドは、ホテルの土地及び建物を10月一杯で引き渡すべき義務を負担していましたが、このような状況では、引き渡しが完了するわけもなく、債務不履行状態に陥り、土地建物の売買契約は解除されます。自主営業は、3カ月以上続きますが、東京地裁は当該営業を不法占拠と判断し、建物明け渡し断行の仮処分決定を発令します。

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