経営トップのための"法律オンチ"脱却講座

ケース31:不動産保有会社を格安M&A? 弁護士・ニューヨーク州弁護士 畑中 鉄丸 氏

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顧問弁護士 畑中鉄丸の助言

「人格ある経済実体・法的実体である企業」との取引

今回の富沢社長の取引の狙いは、新しいチェーン店を建築・開設するための土地を取得することです。とすると、シンプルで一番リスクがないのは、すぐにでも店舗を建設できるキレイでピカピカの更地の状態で土地を入手することです。

ところが、更地取得ではなく、「建物付で購入した上で、更地にする」となると、解体コストがかかりますし、さらに、新しく店舗を建設しようとしたら、地盤調査が必要で、軟弱地盤であることが判明したり、環境汚染が判明したり、埋蔵文化財が出てきたりとなると、どんどんリスクが増えていきます。さらに、設例のように、会社を丸ごと買うとなると、どうなるか?

たとえ、会社が土地建物以外にめぼしい財産がなく、経済的には「土地建物を買うのと、土地建物しかない会社を買うのと同じ」とはいえ、法律的・リスク管理的には、かなりの差異を生じる可能性があります。会社は、ヒト・モノ・カネ・情報が有機的に統合した人格を具備した実体であり、当該「法律上の人格」は、いろいろな取引を通じて、社会との関わりがあります。

廃業しても客は、たいして困らないかもしれません。埼玉の国道沿いのビジネスホテルで、しかもすでに流行っていない、ということですから。ホテルがつぶれて困って騒ぎが起こる、ということはないでしょう。リネンや食材、各種消耗品やサービスを提供してきた外部の業者では少し困るところが出てくるかもしれません。

問題は、従業員です。従業員は、「会社で働き、給料をもらう、という関係が続く」ということが、すべての生活の前提となっています。この前提が壊れるとなると、強く抵抗することになります。無論、法律に則ったレジスタンスもあるでしょうし、ファールラインを超え、要求貫徹まで徹底抗戦の構えをみせる、ということもありえます。

そこまで思いを巡らせると、「経営上必要な資源である更地を買う」ということと、「更地になっていない土地の上に建物があり、その土地と建物を所有し、いまだ事業を継続している企業を丸ごと買う」ということとの間に、無視できない負荷や資源喪失の可能性や事件に発展するリスクの存在を確認できます。

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