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ケース28:借金まみれだが、破産はしたくない! 弁護士・ニューヨーク州弁護士 畑中 鉄丸 氏

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今回の悩める経営者:株式会社大島商事 代表取締役社長 大島おおしま一哉かずや(44歳)

相談内容

 先生~、なんとかなんないすかね~。倒産だけはしたくないんすよ~。わかってますよ、返してない、というか、もう返せる額ではない借金あることは。

 でもね、借金のほとんどは、銀行からの借入で、しかも、要りもしないのに、銀行が半強制的に貸し込んでいったものなんです。何ですか、あれ、ですよ、あれ。為替デリヘル? 為替デリバリーヘルス?

 え? 違う? 為替でりば・・・てぃ・・ぶ? そうそう、それそれ。そんな感じの、ちょっとエッチな名前のヤツですよ。

 1ドル120円超えてたときあったでしょ。あんときに、銀行の担当者の和田部わたべって、エリート臭ぷーんぷんさせたヤな野郎が、「このまま、1ドル150円とかなったらどうします? さらに言うと、200円超えもあるかも。そのときには、御社、どうなさいます? 御社の輸入業は、1ドル120円でも青息吐息なのに、そうなったら、壊滅的でしょ、小島さん」とかおどすんですよ。つか、大島だってーの!

 「じゃ、どうすりゃ、いいんすか!?!」って、泣きついたら、「一ついい方法があります」って、その、それ、ほら、あの為替ホニャララを提案してきたんですよ。一時期、125円くらいまで、どんどん円安進んだでしょ。そんとき、「保険のつもりが逆にちょっともうかっちゃいましたね。ここは、児玉さん、もうちょっと、いっときましょうか」とか煽(あお)られちゃって、深みにはまっていったんです。つか、大島だって!

 そしたら、昨年の英国EU離脱騒動にトランプショックでチョー円高に。トランプショックの後は、結局、円安に戻ったんですが、そんなのわかりっこない。もう、レシオだとか解約とかなんとか言われるがままもてあそばれ、打つ手、打つ手が、全部、裏目。

 それで、銀行からの負債がどんどん膨らんでいき、もうどうしょうもなくなっちゃったんです。それで、また、和田部の野郎に相談したら、今度は、「だったら、お金を貸しますよ。銀行は困った会社に貸すのが仕事ですから、中島さん」だって。もう、大島だって! つか、そこに、怒ってんじゃないし!

 これで、もう銀行ローンまみれで、借金返す毎日。というか、利息しか返せてませんが。もはや、銀行の奴隷ですよ。

 そしたら、そしたら、ですよ。聞いてください、先生! 和田部の野郎、ニューヨークに転勤だって。で、次に担当になった佐々木ってのが、これ、またヤな野郎で。「利息しか返せていないって、どういうことですか! それに、経営に不安があるようですね。8月までにある程度目処(めど)が立たないと、元利一括で返してもらう方向で動かざるを得ませんよ、大畑さん」だって。もう、大島だって! つか、そんな無茶な!

 本業はうまく行っているし、利益もちゃんと出てる。というか、あまりにニッチなところで商売やってるのと、仕入先も卸先も私の個人的なつながりで成り立ってるんで、誰も手出しできない。ほら、3月期は、増収増益です。でもね、和田部の野郎にはめられた、為替デリ・・ホニャララのせいで、もう死にそうで。

 でね、先生。もう破産しちゃいたい。というか、税理士さんも知り合いも口を揃(そろ)えて破産しかない、とかいうわけ。あとなんでしたっけ、民事再生とか。とにかく、裁判所に行って、会社が倒産したことを世間に公表しなきゃダメってわけ。でもね、破産とかしたくない。民事再生とかってのもヤだ。だって、再生だなんだっていっても、要するに、裁判所に行って倒産するんでしょ。

 だってね。悔しいじゃない!

 倒産だと、あちこちに迷惑かかっちゃうし、第一かっこ悪い。助けてくれる先輩経営者とかもいるんだけど、倒産しちゃうと、信用なくなって海外からの仕入れが出来なくなっちゃうし、オダブツ。

 先生、なんとかなんない? 助けて!

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