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ケース24:消費者契約法違反ですって?!ウチは無関係でしょ! 弁護士・ニューヨーク州弁護士 畑中 鉄丸 氏

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今回の悩める経営者:一般社団法人小三也(こみや)政経塾 理事長 小三也こみや百子ももこ(64歳)

相談内容

 先生! もう、我慢できません。
 どうして、私どもような、志があり、日本の将来を憂いて、正義を実現しようとしている、こんな、立派な組織が、消費者問題などという、下劣なことを言われなければならないのですか!

 消費者問題などというのは、たいてい、霊感商法とか、キャッチセールスとか、押し売りとか、そういう、特殊というか、特徴的というか、一風変わったお商売をなさっている、元気の良すぎる会社だけの問題でしょ。

 消費者契約法だかなんだか知りませんが、学校とか立派な上場企業とか、あるいは、政治家を養成しようとしている、立派で、しっかりとした、我々のようなところには、当然適用なんかされません。

 適用除外です。聖域です。法律に書いてあるでしょ。多分。

 経緯を申しますとですね、私の政治家としての人気が抜群にいいものですから、この際、新党を立ち上げようと考え、有望な候補者を選抜するべく、政治家養成のための塾を作ったんです。

 一般社団法人の形をとりましたが、実際は、塾生に入塾料と受講料を払ってもらい、そのお金で、会場代を払い、お呼びした講師に謝礼を払ったり、スタッフの給料を支払ったり、と、まあ、一般の学校事業と同じです。

 私の人気もあってか、応募殺到で、考査料収入も結構入りましたし、将来日本を担っていただけるような有望な方々も多く、選抜を済ませ、無事、入塾式と3回まで講義が終わりました。

 そうしたら、突然、内容証明郵便で、通知書が送られてきたのです。

 消費者契約法に違反するし、特定商取引法に定める概要書面も契約書面ももらっていない。だから、クーリングオフをするので、カネを返せ、ですって。

 まあ、情けない。本当に、情けない。

 仮にも、将来日本のリーダーを目指そうという志をもって、入塾した、理念と正義を体現すると宣言した人間がですよ、私どものような立派な理念ある組織をまるで悪徳商法会社呼ばわりして、挙句の果てに、カネを返せですって!

 何が、消費者契約法ですか! 何が特定商取引法ですか!

 あんなのは、キャッチセールスとか霊感商法とか押し売りとか、そういう特殊なご商売をなさっている方だけに適用される問題であって、学校とか大手企業とかウチのような清く正しく美しい組織には関係ございませんっ!

 これは、名誉毀損でしょ。業務妨害でしょ。恐喝でしょ。ただちに、訴え返してください! 本当に、日本の未来を憂います。

 でも、私は負けません。こんな、カネと自分のことしか考えない、姑息で、利己的で、理念も正義もない、ダメな人間をこれ以上増やさないためにも、多くの政治家を養成し、日本を改革します! 変えます! やります!

 というわけで、先生、早速、こんなくだらない因縁を付けてきた連中への刑事告訴と損害賠償をお願いします。これは、正義の問題です。お金はいくらかかっても構いません。

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