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ケース20:環境規制違反の疑いが発生!製造現場の声をうのみにするな! 弁護士・ニューヨーク州弁護士 畑中 鉄丸 氏

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今回の悩める経営者:株式会社なんでも完成団 代表取締役 一坂いちざか浩二こうじ(75歳)

相談内容

 こんにちは。先生。ご存じのとおり、当社は、最終工程の梱包に特化した業務請負専門受託工場を操業し、全国各市町村から完成品、といっても、ま、いってみれば、「パッケージが整っていない、見るからに貧相な完成品」だけを送ってもらい、これを、チャーミングなパッケージに仕上げる、という業務をしております。

 まあ、それこそPC周辺機器からカー用品まで、果ては、真空パックしたアジの干物から、缶に詰めただけのカニの足などまで、包装をはぎ取った、味も素っ気もない、中途半端な製品が、当社で見事にお化粧され全国に出荷されていましてね。

 5年前にね、現在の新工場を作る際、交通至便な神奈川県の内陸部のある自治体から、熱烈なオファーを受け、乞われるようにして進出したのですよ。実際、今、工場で働いているパートさんは、地元の主婦の方々も多く、地域社会に多大な貢献をしている、と自負しております。

 工場管理のため、僕は月に一度は現場に行きますが、市長からは「ぜひ市庁舎にもお立ち寄りを」と毎度毎度熱烈な申し出を受け、行ったら行ったで、地元の名産品に地酒、ゆるキャラの人形とか、いろいろおみやげをもらうなりしていましてね。まあ、そんなところで、この5年間、地元自治体とは極めて良好な関係を作っております。

 ところが、少し不安なことがありまして......。

 といいますのは、先月、工場に定例視察に行きましたところ、デモなのか労働争議なのか住民運動か何かわかりませんが、工場の正門前にプラカードやのぼり旗やメガホンをもった集団が陣取って、何やら「環境破壊をやめろ」とかなんとか騒いでいるのです。

 工場長に聞きましたら、工場長は「いつものことです。ひまな連中が騒いでるだけです。社長もご存じのとおり、市とはうまくやっていますので、ご心配にはおよびません。ま、実際、ものすごい種類の包装資材を企画開発製造するので、そりゃ、染料やら加工用資材などもいっぱい使いますし、環境保護の点からすると心配でしょうからね。法律とか、すべて調べつくしたわけじゃありませんが、市長からはお墨つきを得ているんです。だいたい、こっちは乞われてこんなへんぴなところに来てやったわけですし、ウチがつぶれでもしたら、路頭に迷うのは地元の人間ですよ。ウチの足を引っぱっれるわけないでしょ」と、まったく意に介していない様子なのです。

 そんななか、先日、何やら市議会の議員有志と称する団体から僕宛てに「御社の環境問題を告発する」とかなんとか書いてある、見るからに、おどろおどろしい手紙が届いたのです。工場長に電話しても、「そんなの無視してください。こっちは市長とうまくやっていますから」の一点張り。先生、どう思います? ほっといて、いいんでしょうか?

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