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ケース21:貸せない額じゃないけど、情実融資を拒否したい! 弁護士・ニューヨーク州弁護士 畑中 鉄丸 氏

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今回の悩める経営者:株式会社ミセス・アツコ 代表取締役 具足ぐそく敦子あつこ(61歳)

相談内容

 先生、どうしたらいいか、困っちゃって。
 いえね、ご存じのとおり、ウチは、中高年ミセス向けのハイクラスファッションブランドで、すでに確固たる知名度を獲得しておりますし、本業には何の心配もございません。

 ところが、一昨年ころでしたか、遠い親戚で、私の出身の四国の田舎で歯ブラシを作っている、もう倒産寸前の会社から、土下座せんばかりにお金の無心がありまして。

 なんでも、「これからは歯ブラシのデリバリーが流行る」という話で、新しい歯ブラシデリバリービジネスを展開するための、事業資金を融資してくれないか、ということなんです。

 正直言って、そんな事業、理解できませんでしたが、口腔ケアが高齢者にブームらしくて、高機能の歯ブラシをお届けすると、驚くほど儲かって、在庫もはけて、もう絶対大丈夫、って話なんです。

 実際、田舎から、この会社に役員やら工場長やら部長やら課長やらでかかわっている、親戚筋一族郎党総5人がやってきて、「是非、是非、是非。迷惑はかけない」とうるさいんで、あと、私も東京に出てきて創業する際に資金援助してもらった借りもあるので、1000万円融資したんです。

 最初は、物珍しさで地元の新聞やらで取り上げられたそうなんですが、その後は、まあ、ほどほど。金利は払ってきましたが、まだ、元本は半分以上残っている状態。

 そしたら、また、一族郎党がやってきて、といっても、今度は、上京して都内の大学に通っているのも連れてきて、頼み込みです。

 社長やっている従兄弟の具足遊太郎曰く、「これでメドがついた。これはいける! やるなら首都圏、花のお江戸! とはいえ、都内は家賃も人件費も高いので、とりあえず、このビジネスモデルを、近郊の群馬あたりで試してみて、うまく当てて、東京の六本木あたりに進出したい」とか言い出し、今度は、8000万円貸してくれ、って頼み込むんです。

 「これは、一族の命運がかかっている。敦子にも昔会社を立ち上げるときにカネを貸してやっただろ。その恩を忘れたとは言わせないぞ。このとおり、上京して大学に通わせている遊太も、手伝わせるし、責任を負わせる。ほら、このとおり、故郷の一族で、この歯ブラシ事業にかかわっている20名全員の連名での決意表明書もある。頼む!」ですって。

 担保といっても工場とか本社社屋は全部地元の信用金庫の抵当に入っているし、田舎の土地も建物も同じようなもの。

 まあ、8000万円って、貸せない額じゃないけど、どうなのかな、って。先生、どうしたらいい?

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