経営トップのための"法律オンチ"脱却講座

ケース6:トップの公私混同取引が発覚した! 弁護士・ニューヨーク州弁護士 畑中 鉄丸(はたなか てつまる) 氏

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今回の悩める経営者:(株)コンドー商事 代表取締役 甲子こうし昆堂こんどう(84歳)

相談内容

 我が社は日本全国で家電量販店をチェーン展開しとって、東証一部上場してから、もうだいぶ経つんじゃが、今の今までなーんの問題もなく経営しとったことは、先生もご存知のとおりじゃ。ただな、今日はちぃと内密の相談があってな、知り合いの経営者仲間の紹介で、先生のとこに来たわけなんじゃ。
 実は、ワシの会社が数年前から借りとる土地があっての。いやいや、ど田舎の空き地にプレハブ倉庫を建てて、そこにどうでもいい備品やら店舗什器やら不良在庫やらを置いたりしとるだけじゃ。まあ、こんな土地、我が社の財力からすると、わけなく買えるんじゃが、まあ、いろいろ、しがらみがあって、借りとるわけなんじゃ。

 いや、それでな、最近、メーンバンクが送り込んできた、ほら、あの、社外取締役とか言われる、アッタマの固い、"法貴(ほうき)遵(まもる)"ちゅう弁護士が、この取引に因縁つけて、コンプライアンスだのヘチマだの、ピーピーピーピーうるさいんじゃわ。

 この土地はな、我が社の取締役の羽根川(はねがわ)一子(ぴんこ)が代表取締役として経営しとる、ほんでもって、ワシも社外取締役として名を連ねとる、株式会社ハネピンちゅう会社が持っとるもんじゃ。それを我が社がピンハネ、じゃなかった、ハネピン社に賃料払って借りとるわけじゃわい。まあ、この一子ちゃんな、ゆうたら、ワシの朋輩(ほうばい)の娘でな、小さいころから目ぇかけて、親代わりで育ててきたんじゃ。もう立派になって、いっぱしの女性幹部じゃわ。

 この株式会社ハネピンじゃが、設立するとき、一子のやつ、カネがない、ゆうてワシに頼んできたんで、まあ、貸したり、出資したりして、カネの工面はワシが丸抱えで面倒みてやったんじゃ。しかしな、輸入雑貨や化粧品の卸やら、いろいろやりおったが、ぜーんぶ、失敗。今は、もう、このど田舎の土地を我が社に賃貸しとる以外、たいした商売はやっとらんわけじゃ。

 ほいたら、新参のなーんもわかっとらん社外役員の法貴弁護士が、この賃貸はインチキじゃ、とか言って、ぎゃあぎゃあ騒ぎだしよったんじゃ。利益折半取引?とかゆうとったかの。ああ、そうそう、利益相反取引。それそれ。「その土地は利用価値がないし、会社法違反の利益相反取引で契約は無効。会社がハネピン社に払ってきた賃料は、ぜーんぶインチキ。これまで会社が払ってきた賃料全額に5%だか、6%だの、訳のわからん暴力金利をつけた上で、今月までに一子と一緒に全額弁償せぇ。さもないと、会社を代理してワシを訴えるし、特別背任で告訴だぞ」とかぬかしよる。

 まあ、これまで我が社がハネピン社に払った賃料など、1億5000万円くらいになるが、こんなもん、ハナクソみたいなもんで、払えんことはない。とはいえ、あの新参の社外役員の、生意気な腐れ弁護士風情に言われるのが、悔しゅうて、悔しゅうて。

 我が社は、ワシが若い頃から一代で築き上げ、ようやく東証一部に上場できた会社じゃが、上場廃止基準抵触ぎりぎりまでワシが株を握っとるし、まあ、ゆうたら、ワシのもんじゃわい。上場するまでは、今回のような取引についてワシ一人の判断でやっても、別に誰も文句を言わんかったし、ましてや利益相反にあたるなんていちゃもんつけてくる奴は、誰一人おらんかった。それを、急に、会社法違反だのヘチマだの言われて、おかしいじゃろ。

 法貴弁護士は、「取締役会を開いて議論して承認していないことが問題だ!」とか吠えとるが、だいたい、我が社の規模からすれば、1億5000万円なんて、はした金。こんなみみっちい取引に、いちいち取締役会を開いとったら、それこそ、無駄金です。知り合いの経営者も皆、「こんな取引は取締役会みたいな仰々しいもん開かずにやってます」とか言うとるわ。

 上場や、いうても、会社の物は、オーナーであるワシのもん。ボールペン1本、コピー紙1枚、ぜ~んぶ、ワシのもんですわ。この、腐れ外道の社外役員の弁護士に、先生から、一発、ばーーんとかましてやってください!

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