経営トップのための"法律オンチ"脱却講座

ケース4:名板貸し(ないたがし)リスクにご注意を 弁護士・ニューヨーク州弁護士 畑中 鉄丸(はたなか てつまる) 氏

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今回の悩める経営者:株式会社 三屋根屋ミヤネヤ 代表取締役 三屋根ミヤネ誠一セイイチ(51歳)

相談内容

 先生もご存じのとおり、ウチは冷凍食品の加工をやってます。例の、ほら、CMとかで先生も見たはる「まんまイケルで」ゆう、レンジで解凍せんとそのままお弁当箱に入れるだけで、ランチタイムにはおいしくいただけるという冷凍食品を開発し、爆発的な人気商品となりまして。
 そんなウチの好業績を妬んでか、架空請求が来てはなはだ迷惑しとるんですわ! んなもん、大阪の会社のウチに通用するか、ってなもんでっせ。

 といいますのも、先日、株式会社フルタチゆう東京の会社から「調理機器の代金として1500万円を振り込め」という請求が来たんですが、当社は、そんな会社見たことも聞いたこともありません。もちろん、取引実績なんて一切ありません。ところがどっこい、フルタチ社は「御社の埼玉工場に調理機器を納入したが、一向に支払いがないんで訪ねたら"もぬけの殻"で、社長兼工場長にもまったく連絡がつかない。御社の工場なのだから、本体である御社の方で、責任をもって代金を支払ってもらわなければ困る」って強硬に請求してきよるんですわ。

 確かに、当社の冷凍食品の製造委託先である、ミノリカワ食品合名会社ゆう埼玉の零細食品会社が、当社製品の爆発的なヒット、それとこれに続く当社の東日本での知名度の劇的向上にあやかって、夏前ころに社名変更したいんや、言い出しよったんです。

 その社長、取引当初、ウチのことは「関西弁丸出し」「ヤクザちゃうか」「ヤカラやで」とかゆうて、えらい馬鹿にしとったんですが、売れたら手のひら返して、「さすが社長。前からすごい思ってました。もう、一生社長についてきます。創業100年の当社ですが、ここはひとつ、『三屋根屋東日本』ゆう名前にしていいでしょうか」なんて土下座して言われました。

 ウチも、恩を売れるわ、名前も売れるし、何や、「三屋根屋、東日本進出!全国制覇!」みたいなイメージで、ええカッコできるわ、思て、「ええでぇ、ええでぇ~。ドデカイ看板出してもらって、ぜんぜんOKでっせ~」なんて返事してました。

 とはいえ、この埼玉の零細会社は、合名会社とか何とかがやってますが、ほんなもん、当社とは全く別の法人ですわ。出資もしてませんし、役員も派遣してません。ゆうたら、取引先の下請けの一つですわ。んなもん、ちょっと調べれば誰でも分かりますわ。

 ですから、フルタチ社には、「三屋根屋東日本」ゆう会社は、ウチとは全く別の会社であることを説明して、「他人の買い物の代金を、ウチが支払わなくちゃならん道理はないでしょう」とゆうたんですが、フルタチは「たとえ別の事業者であったとしても、『三屋根屋』という名称を使用させていた以上、御社にも支払う責任がある」とかヌカすんです。

 ほな、なんですか。私が、飲み屋で「こんばんは、ブラッド・ピットです」とか偽名使って遊んでたら、アンジョリーナ・ジョリーが勝手に縁組した養子の面倒みさせるとか? んなアホな話がありますかいな。

 こんなん、完全にフルタチ社の嫌がらせですよ、間違いなく業務妨害ですよ。ほったらかしといて、ええんですよね?

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