経営トップのための"法律オンチ"脱却講座

ケース2:従業員の過労死で、役員個人が賠償させられる!? 弁護士・ニューヨーク州弁護士 畑中 鉄丸(はたなか てつまる) 氏

経営

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

過労死が社内で発生した場合の法的責任

このように、安全配慮義務違反で「会社」が損害賠償の支払いを命じられた事例は、最高裁判決となっているものを含め、それこそ山のように存在するところです。

では、当該賠償責任は「"会社"だけにとどまり、"取締役個人"が損害賠償責任を負担するということはありえない!」と言い切れるのでしょうか?

経営者の皆さんの中には、会社で過労死事案が生じたとしても、「会社が責任を負うことはあるかもしれないが、まさか自分個人に責任が降りかかってくることはないだろう」とお考えの向きもあるかもしれません。

しかし、従業員の過労死につき、過労死が発生した当時の代表取締役のみならず、専務取締役や、平取締役個人までも含めた合計4名に賠償責任を負わせた裁判例(※大阪高裁2011年5月25日、その後、最高裁2012年9月24日決定で上告が棄却され、確定)があり、十分な注意が必要です。

過労死事案で取締役個人も被告として訴求されるリスク

一昔前までは、「過労死関連の裁判において、"会社"だけでなく"取締役個人"、特に代表取締役をも被告として訴訟を提起し、取締役個人の責任が認められる」という法的状況はあまり考えられず、したがって、過労死事件が発生した場合、法人である会社が経済的危機に陥ることはあっても、役員個人の責任は深刻に考えなくていい、という風潮がありました。

とはいえ、「被告が中小企業であるため、支払能力に不安があり、取締役個人も訴えないと、実質的な救済として機能しない」という背景事情があり、また、中小企業であれば、取締役も現場を良く知っていることが多いでしょうから、「責任は法人限りであって、指示命令した取締役個人は一切、知らんぷりしてもいい」という状況を放置することは、法的正義に反します。

そこで、上記のような状況の下、中小企業で発生した過労死事件において、地裁レベルで、会社のみならず、役員個人に対しても責任を負担させる判決が出始めました。

ところで、前述の最高裁決定の事案は、中小企業ではなく、支払能力も十分な「東証一部上場企業」従業員の過労死事案において、「会社」だけでなく、あえて「取締役個人」も被告とされ、「取締役個人」も損害賠償の支払いを命じられる、というものでした。

この最高裁決定が追い風となり、今後は、企業の規模を問わず、会社のみならず、当該過労死事件に関係する取締役個人をも被告とする訴訟が増えるもの、と推測されます。

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

経営

新着記事

もっと見る
loading

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。