泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

円安でも「先進国でのM&A」に目を向けよ GFリサーチ 泉田良輔氏

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2020年の東京オリンピックまで、国内の消費・投資に好機が続く。国内の事業比率が高い企業にとっては追い風といえる。だが、そうした企業が投資している案件は国内事業のてこ入れではなく、海外企業のM&Amp;Aである。しかも、ターゲットは高成長期待の新興国企業ではなく、先進国の企業が中心になっている。円ベースの買収金額が膨らむ円安になっても、このトレンドは変わらないのではないか。

消費市場は依然大きく、東京オリンピック控え投資機会も潤沢

2014年12月の衆院総選挙の結果により、新たに組閣される新・安倍政権下においてもアベノミクスの政策がこれまで通り継続される可能性が高い。アベノミクスの成長戦略の根幹を一言でいえば、「名目GDPの約60%を占める民間最終消費支出を刺激する内需拡大策」と「同20%弱を占める民間による投資をいかに刺激するか」にあるといえる。

経済成長の実現という目標のもと、その政策の成功確率を上げるアプローチとしてGDP構成要素の中で最大シェアを占める国内消費に焦点を合わせるのは当然だ。ただし、その国内消費も、直面する課題は多い。賃金は上昇しつつあるが、物価やエネルギー価格の上昇(原油を除く)は実質の可処分所得にマイナスの影響を与える。消費税増税や高齢化、長期的には人口減少の影響もあり、日本人の国内消費を継続的に拡大させていくのは難しい。

その半面、円安による好機もある。デフレ脱却を目的に日本銀行は量的緩和を継続し、為替レートはさらに円安に向かった。黒田日銀総裁が就任する前と比べると、外国人観光客はずいぶんと日本を訪れやすくなった。より多くの外国人観光客が日本国内で消費してくれれば、国内消費を盛り上げるきっかけとなる。

右図は、2010年1月から2014年11月までの円ドルの為替レートと訪日外客数を示したものである。円安が進むにつれて、訪日外客数も勢いよく伸びている。2012年後半から円安へ反転した後、訪日外客数が7割ほど伸びていることが分かる。

日本政府観光局(JNTO)によれば、2014年は11月までの累計で訪日外客数が日本の人口の1割にあたる1200万人を超え、すでに2013年通期よりも多くなっている。この流れを維持、もしくは加速させようとするのであれば、日本国内の観光地の整備や制度変更(外務省が2014年11月に発表した中国人に対するビザ発給要件の緩和など)に加え、引き続き為替レートを円安にトレンドを保つということも選択肢の1つであろう。

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