半導体業界における次の時代のメインプレーヤーはどこだろう。パソコン(PC)の時代、「CPU(中央演算処理装置)」の市場を握った米インテルは間違いなく覇者であった。ただし、スマートフォンの時代になると、米アップルや米クアルコム、韓国サムスン電子のSoC(CPUや関連半導体をまとめた統合型チップ)が大きく成長し、インテルはスマホ向けの市場で存在感を見せつけることはできなかった。
インテルはデータセンター向けコンピューターのCPUで引き続き大きな存在感を示すが、最近急速に注目を集めている半導体メーカーがある。ゲーム、データセンター、AI(人工知能)のシステム、自動運転車などに使われる「GPU(画像処理半導体)」を得意とする米エヌビディアである。今回はそのエヌビディアの実像を、現状に対する評価と未来戦略の観点で解説していきたい。
株式時価総額に見るエヌビディアへの高い成長期待
まずは、エヌビディアの現状に対する評価を見ていこう。
最初に、同社がなぜ注目されているのかについて、いくつかの指標で示してみたい。
エヌビディアの株式時価総額は2018年2月15日現在で1463億ドル(1ドル106円換算で15.5兆円)。これは、インテルの2124億ドル(同22.5兆円)には及ばないものの、クアルコムの986億ドル(同10.4兆円)、米アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)の118億ドル(同1.2兆円)をしのぐ。
ちなみに、半導体の受託生産の最大手である台湾積体電路製造(TSMC)の時価総額は2223億ドル(同23.6兆円)、SoCやメモリー、さらには半導体やスマホの製造販売も行っているサムスン電子の時価総額は2881億ドル(同30.5兆円)である。
半導体以外にスマホも手がけるサムスン電子や受託生産中心のTSMCと比較するのは無理があるものの、エヌビディアの時価総額が米大手半導体メーカーのクアルコム、AMDより大きいのはなぜだろうか。
時価総額は、企業収益とその成長期待を掛け合わせたものである。投資家の成長期待が高ければ、足元の収益規模が大きくなくとも時価総額は大きくなる。まさに今のエヌビディアがそれだ。エヌビディアの当期純利益(税金を支払ったあとの利益)はインテルの約30%程度に過ぎないが、時価総額はすでにインテルの約70%あり、株式市場におけるエヌビディアへの相対的な期待の大きさをうかがわせる。