マイクロソフトを知らないビジネスパーソンはほとんどいないだろう。Windows(ウインドウズ)、Word(ワード)、Excel(エクセル)といった同社のソフトウエア製品はパソコン(PC)における事実上の標準になっており、ほとんどのビジネスパーソンが利用している。
一方、同社が数年前まで株式市場で「イケてない」テクノロジー企業の代名詞であったことも事実だ。株価は上昇していたが、ライバルの同じテクノロジー企業の株価に比べてパフォーマンスが見劣りした。PCの市場が飽和するなか、スマートフォンやタブレットが急伸。さらに企業内の業務システムのコンピューターがクラウドサービスに置き換わっていく技術の流れに対しても出遅れ感があった。
しかしその評価は、同社3人目の最高経営責任者(CEO)であるサティア・ナデラ氏が進める変革により変わりつつある。現在、同社の株価はITバブル崩壊前の水準を大きく超え、過去最高値を更新し続けているところだ。今回はマイクソフトの株価の好調さの背景を同社の決算データなどをもとに探りながら、今後の課題を明らかにしていこう。
ITバブル崩壊後、ライバルから大きく出遅れる
マイクロソフトの株式市場における存在感は大きい。2017年12月22日現在における同社の株式時価総額は6597億ドル。1ドル113円換算では約75兆円となり、これは米国上場株としてアップルに次ぐ規模だ。今でこそ株式市場での評価が高まってきたマイクロソフトであるが、2001年のITバブル崩壊後は株式投資家に不人気な企業の代名詞であった。
マイクロソフトと同じようにITバブル以前から頭角を現していたテクノロジー企業の株価を見てみよう。下図はアマゾン・ドット・コムが上場した1997年5月末時点の株価を100として、その後の推移を示したものである。マイクロソフトの株価は5倍以上になっているが、アマゾンは800倍近く、アップルは300倍近くにそれぞれ株価が上昇している。
急成長した企業ばかりと比べるのはフェアではないという意見もあろうが、それほど無理がある比較ではない。
マイクロソフトは1975年4月に創業され、上場は1986年3月である。一方、アップルは1976年4月に創業され、上場したのは1980年12月。こうしてみるとマイクロソフトとアップルは、創業時期などを考えればほぼ同世代の企業といえる。両社は取り扱う製品領域が必ずしも同じではないが、創業から40年以上たつコンピューター業界の大手という意味では同じだ。その2社の間で投資対象としてのパフォーマンスにこれだけの差が出たことになる。
グーグル(1998年創業)は創業してまだ20年、フェイスブック(2004年創業)は14年であり、比較的「若い企業」とみられる。その「若い企業」の株価とマイクロソフトの株価を比較するつもりはない。アマゾンは1994年に創業され、24年たった企業だ。そのアマゾンとマイクロソフトを比べるのはやや厳しいかもしれないが、株価のパフォーマンスが大きく見劣りすることは記憶にとどめておいてよいだろう。