三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は10月、金融とICTを融合するフィンテック領域の新会社を設立する。名称は「Japan Digital Design(ジャパン・デジタル・デザイン)」(JDD)で、MUFGの内部組織を拡張して設立すると2017年7月末に明らかにされている。[1]
JDDはMUFG の100%出資で設立されるが、外部のエンジニアを採用したり、千葉銀行やふくおかフィナンシャルグループといった地方銀行および地方銀行グループと業務提携したりすることで、MUFGグループ外からも人材を獲得。銀行業高度化などに資する技術開発やシステム開発・販売および運用などを行うという。
この発表は、一見すると規制業種でありがちな、業界横並びの取り組みの1つのように感じるが、開示されている情報を読みとくと、銀行業界がフィンテックに対して転期を迎えたことを示す大きなニュースである。注目すべき点は以下の3つだ。
(1)参加する地銀・地銀グループ数が32と多い
(2)独自路線を進んでいた地銀・地銀グループをも巻き込んだ
(3)新会社JDDの資本金が30億円と大きい
それぞれについて順に説明しよう。
なぜ地銀・地銀グループが32も参加するのか?
第1に注目したいのは、JDDとの業務提携を予定している、地銀・地銀グループがMUFGのプレスリリースに掲載されている名称ベースで32にも及ぶ点だ。それも預金残高の大きな地銀・地銀グループが参加していることに驚く。
例えば、千葉銀行、ふくおかフィナンシャルグループ(福岡銀行、熊本銀行、親和銀行などを傘下に持つ)、静岡銀行、常陽銀行(めぶきフィナンシャルグループ)、七十七銀行、広島銀行、八十二銀行、中国銀行、伊予銀行、十六銀行、山口フィナンシャルグループ(山口銀行、もみじ銀行、北九州銀行を傘下に持つ)といった、各地域・都道府県の有力な金融機関が参加している。
下図は、JDDと業務提携を予定する「地銀・地銀グループの預金残高」「地銀・地銀グループによるMUFG株式保有の有無」「三菱東京UFJ銀行による地銀および地銀グループの株式保有の有無」を、2017年3月期の有価証券報告書などをもとに示したものである。
JDDと業務提携を予定する「地銀・地銀グループ」の概要 出所:有価証券報告書、決算説明会資料をもとにGFリサーチ作成 注:鹿児島銀行の預金合計は譲渡性預金を含む。保有比率は発行済株式総数に対しての割合
すぐにわかるように、業務提携を予定する地銀・地銀グループは、有価証券報告書を見る限り、福井銀行を除く、ほぼすべてがMUFG株を保有する。さらに、三菱東京UFJ銀行が地銀・地銀グループの株式を保有する場合が半数を超える。つまり、半数以上が株式の持ち合いをしている。今回のJDDの取り組みが「仲良しグループ」といわれる背景もそこにあるが、32という数はそれにしても多い。