台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業がシャープを買収。会計問題に揺れた東芝はキヤノンに東芝メディカルを売却――。かつて好業績を上げていた日本の電機メーカーが厳しい状況に追い込まれている。
他の電機メーカーについても、一時の苦しい時期を乗り越えたとはいえ、その後の回復が順調でない企業も多い。たとえば、ソニーは業績的に最悪期を脱した印象はあるが、2015年度の営業利益は過去最高益の半分強にすぎず、成長軌道に乗ったとは言い難い。日本の電機産業で再生の代表例といわれている日立製作所も、過去最高益を更新してはいるが、その後、新たな成長機会を十分に取り込みきれていないようにもみえる。
こうした業績不振には、もちろん理由がある。それを一言で説明することは難しいが、企業ごとに業績の分かれ目となる転換点はあった。日本の電機産業が追い込まれている状況について整理しながら、各企業で異なる低迷の要因を改めて見ていきたい。今回はシャープに焦点を当てる。
6年で株価が10分の1になったシャープ
はじめに、株式市場におけるシャープと日本の電機メーカーの評価を見ておこう。株価は「現在の収益水準と将来の成長性を掛け合わせたもの」を織り込んでいる。その推移を見ることで株式市場におけるその企業への見方の変化を知ることができる。
下図は、サブプライムローン問題が表面化した2007年から現在まで、主要電機メーカー5社(シャープ、ソニー、東芝、日立製作所、三菱電機)の株価推移を指数化したものである(2006年末の株価を100とした)。
上図からわかるのは、東証株価指数(TOPIX)の株価パフォーマンスを現時点で上回っているのは、三菱電機のみであるということだ。この図では、見やすさを考慮して5社の株価推移だけを載せているが、NEC、富士通、パナソニックを加えた8社としても結果は同様である。
2016年5月20日時点の株価指数は、シャープが「7」、東芝が「29」と大きく下落している。シャープについては、すでに12年の時点で株価指数が一度10を下回った。日立製作所とソニーは足元の業績が改善傾向にあり、特に日立は16年3月期に営業利益で過去最高益を計上しているのだが、株価指数はそれぞれ「67」と「57」にとどまっている。TOPIXが「80」であることを考慮すれば、株式市場での評価は06年末と比べてまだ低い水準にある。