泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

自動運転車狙う「半導体大再編」、日本は出遅れ GFリサーチ 泉田良輔氏

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公道で実証実験を積み重ねるグーグルの自動運転車に大きな関心が向けられているが、その陰では、車載向け半導体業界で大規模な再編が起こっている。それらはすべて次世代自動車の時代が来ることを見越した動きとなっている。

だが、日本勢の動きは鈍い。ルネサス エレクトロニクスは国産完成車の高い市場シェアを背景に、これまで自動車向け半導体でグローバルナンバー1を維持してきたが、その地位はすでに脅かされている。

自動運転技術を含め、自動車技術が今後どのように変化してくかを知るには、半導体を外して考えることはできない。どれほど夢のような自動運転車を描いても、半導体でその機能を実現できなければ夢物語で終わってしまうからだ。現在、自動車がネットワークにつながることを想定するIoT(モノのインターネット)時代に向けて、世界の半導体メーカーが相次いで大きな意思決定をしている。今回は、海外の半導体メーカーの動きと狙いを整理するとともに、ルネサスや日本の自動車メーカーがこれから直面するであろう脅威について考えていきたい。

東日本大震災で窮地に陥ったルネサス

ルネサスの業績を改めて整理しておこう。ルネサス エレクトロニクスは、NECを母体とする半導体メーカーであったNECエレクトロニクスと、日立製作所・三菱電機を母体とする半導体メーカーであったルネサス テクノロジが2010年4月に経営統合し、誕生した半導体メーカーである。

NECエレクトロニクスとルネサス テクノロジは、リーマンショック後に先進国での完成車需要が落ち込んで一時的に業績が悪化していたこともあるが、それより車載用途以外に使用されるSoC(システム・オン・チップ)の業績悪化が経営統合を進めるきっかけとなった。

新生ルネサスの誕生直後は、事業統合計画「100日プロジェクト」を推進するなど、収益性を高めるために統合効果をより早く実現しようとしていた。しかし、2011年3月に東日本大震災が発生し、状況は一変した。前工程(シリコン基板に集積回路を作る工程)の主要工場が被災しただけでなく、一時的に半導体製造に必要な原材料も入手が困難になり、半導体製造に欠かせない電力も途絶えるなど、経営体質を改善するどころの事態ではなくなった。

その後、2012年には産業革新機構やトヨタ自動車、日産自動車、デンソー、パナソニックといったルネサスの顧客企業が中心となり、ルネサスの第三者割当増資に応じ、財務体質を改善させた。そうした資金を活用するとともに、事業や半導体製造ラインの売却を通じ、選択と集中を行ってきた。現状、経営統合直後と比べて売上高を大きく落としながらも、収益性を改善させてきた。

業績が厳しかったのはルネサスだけではなかった

日本人の多くは、こうしたルネサスの経営状況を見て、「日本の半導体メーカーの収益性はもともと高くなく、ルネサスは大震災の影響もあり、業績を大きく悪化させたのではないか」と見ていたのではないだろうか。しかし、それは事実と異なる。ルネサスと競合する海外企業の業績と比べればわかる。

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