デフレ懸念が漂い量的緩和を決めた欧州にあって、ドイツでは得意の製造業を中心に企業の業績や株価が好調だ。そんなドイツが最近、官民一体で「インダストリー4.0(第4次産業革命とも呼ばれる※)」というコンセプトを打ち出し、製造業の在り方に新しい提案をしている。一般に先進国ではサービス化が進むものと考えられているが、なぜドイツは新たに産業革命を起こそうとしているのか。
(※)インダストリー4.0は、ドイツの政府、産業界、学界が総力を挙げて製造業の高度化を目指す巨大プロジェクト。工場内の生産プロセスを高度にデジタル化・自動化し、そうした工場同士を業種にかかわらずネットワーク化することで、大幅なコスト削減を実現しようとする取り組み。
どうやらドイツには、今後も「強い製造業を維持したい」と考える理由があるようだ。製造業が得意であるということはもちろんだが、それ以外にも歴史的な背景が影響している。1990年に東西ドイツが統一されて以降、東ドイツだった地域の失業率は西ドイツだった地域のそれより常に高く、ドイツ統一から25年近く経過した現在でも、両者の失業率の差は埋まっていない。
しかし、下のグラフから分かるように、2003年以降は失業率の格差が徐々に縮小し始めた。それは、国内および海外向け製造業受注額指数(2010年=100)が急速に伸び始めた時期と一致する。特に海外向けの受注額指数が伸びている。また、2006年以降は、旧東西ドイツ地域の失業率が下がり続け、東西の格差もさらに縮小した。
途中、リーマンショック(2008年)の影響により、製造業受注額指数は100を割り、一時的に失業率が上がった時期もあったが、その後は再び失業率が下がっている。製造業が堅調であれば、(下限に近付いたように見える旧西ドイツでの失業率改善はさておき)旧東ドイツの失業率をさらに改善できそうな期待感がある。やはりドイツにとって、製造業は国内の雇用安定化に欠かせない条件といえる。