泉田良輔の「新・産業鳥瞰図」

独占を狙うアマゾン、新たな事業モデルの布石に GFリサーチ 泉田良輔氏

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世界の小売市場でイノベーションを起こしている企業はどこかと問われれば、多くの人がアマゾン・ドット・コムと答えるかもしれない。圧倒的な品ぞろえ、低価格、当日配送、そして無人航空機(UAV)による無人配送実験などの話題もある。その結果として、恐ろしいほどのスピードを維持しながら成長を続けている。

現在、世界小売市場の売上高第1位は米ウォルマートである。2013年度の売上高は4763億ドル(1ドル=108円で51兆4400億円)に達し、仏カルフールや英テスコといった世界2位グループと比較すると4倍の売上規模を誇る。現在のアマゾンとの差も、実に6倍以上になる。

しかしアマゾンは、声高に宣言しているわけではないものの、おそらく米ウォルマートを抜き去って世界小売市場の「独占」かそれに近い状態を目指していることだろう。それがイノベーションの本質でもあるからだ。あとで詳しく説明するが、きわめてシンプルな方法でアマゾンとウォルマートの将来の売上高を試算すると、2021年にアマゾンがウォルマートを抜く可能性がある。

独占することもイノベーション

ヨーゼフ・シュンペーターが唱えたイノベーションの元々の概念である「New Combination(新しい結合)」には5つの定義がある。その中でも現代のテクノロジー業界では、5つめの定義である「独占の地位を創出したり、独占を破壊したりするような新たな産業構造を推し進めること(筆者訳)」が現実によくみられる。シュンペーターもイノベーションという言葉の定義の中にはっきりと「独占(モノポリー)」というキーワードを入れている。自身が市場を独占することや、独占されている産業を破壊することはイノベーションなのである。

日本人は、イノベーションというと、どうしても技術や発見を活用して、これまでにない製品やサービスを生み出すことに意識が向かいやすいが、イノベーションにはこのような側面がある。

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